お金が要る時期と、お金が入る時期がずれる
進学で家を出るとき、いちばん苦しいのは総額ではなく時期です。入学金・前期学費・敷金・家具家電・引越しが、ほぼ同じ月に重なります。ところが奨学金が振り込まれるのは入学後です。この数か月のずれを、どう埋めるか。ここに使える制度がありますが、使う順番が決まっています。
なぜ足りなくなるのか
進学の費用が足りなくなる理由は、金額が大きいからだけではありません。支出が2〜3月に集中し、収入(奨学金)が4月以降だからです。
時期のずれ
| 時期 | 起きること |
|---|---|
| 12〜2月 | 受験料・受験の交通費と宿泊費。複数校なら重なります |
| 合格発表〜3月 | 入学金の納付期限。期限は合格発表から1〜2週間のことがあります |
| 2〜3月 | 住まいの契約(敷金・礼金・前家賃・仲介手数料)、引越し、家具家電 |
| 3〜4月 | 前期の授業料 |
| 4月以降 | 奨学金の初回振込。ここでようやく入ってくる |
つまり、いちばん大きく出ていく時期に、まだ何も入っていません。制度を調べるのは合格してからでは遅く、受験の段階で確認しておくものです。
3月に出ていく費用
見落とされやすい項目
- 入学金(納付期限が短い。複数校に合格した場合、進学しない学校の入学金は原則戻りません)
- 前期授業料(入学金と近い時期に来ることがあります)
- 住まいの初期費用(敷金・礼金・前家賃・仲介手数料・保証会社の保証料・火災保険)
- 引越し費用(3月下旬は年間で最も高い時期です)
- 家具・家電(ベッド、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、カーテン、寝具)
- ネット回線の工事(3月は工事枠が埋まります。申し込みが遅いと入居後しばらく使えません)
- 教科書・パソコン(学部指定のスペックがあることがあります)
- 国民年金(20歳になったら。学生納付特例の申請ができます)
引越しとネット回線は、時期そのものが費用と待ち時間に直結します。合格が決まる前でも、相場と工事の空き状況だけは見ておけます。
入居先の住所で、回線の提供エリアと工事の条件を確認する
3月は工事が混みます。エリアと工事の要否だけでも先に分かります。
- 掲載する料金は各社公式サイトの公表値です
- 条件は住所・利用状況により変わります
- 見積もり・比較は無料です
使う順番が決まっている
ここが最も重要です。社会福祉協議会の教育支援資金は、第一選択ではありません。
大阪府社会福祉協議会の案内には、こう書かれています。
社協の案内に明記されている位置づけ
| 内容 | |
|---|---|
| 原文の趣旨 | 各種給付型奨学金や育英会、日本学生支援機構奨学金(第一種・二種)等の貸付制度を優先して活用していただくが、すぐに活用できない場合に、それまでの「つなぎ」として貸付を行う |
これを知らずに社協へ行くと、「まず日本学生支援機構を」と案内されて終わります。上位に出てくる社協のPDFにしか書かれておらず、解説記事には出てきません。
この順で当たる
- ① 給付型の支援を先に確認する国の修学支援新制度(授業料等減免+給付型奨学金)、学校独自の減免・特待、地方公共団体や民間の給付型奨学金。返さなくてよいものから当たるのが鉄則です。
- ② 日本学生支援機構の奨学金を申し込む予約採用は高校在学中に申し込みます。時期を逃すと在学採用まで待つことになります。ここが最大の分岐点です。
- ③ 入学前に必要な資金の手当てを考える労働金庫の「入学時特別増額貸与奨学金」を担保にした融資、国の教育ローン(日本政策金融公庫)など。入学前に必要な費用は、奨学金では間に合いません。
- ④ それでも埋まらない部分を社協に相談する教育支援資金は無利子です。ただし「つなぎ」の位置づけなので、①〜③をどう当たったかを説明できるようにしてから行ってください。
- ⑤ 住まいと引越しの費用を圧縮するここは制度ではなく交渉と時期の問題です。後述します。
教育支援資金の中身
貸付の内容(確認した社協の公表値)
| 区分 | 月額の上限 | 年額の目安 |
|---|---|---|
| 高校・専修学校(高等課程) | 35,000円 | 420,000円 |
| 高等専門学校 | 60,000円 | 720,000円 |
| 短期大学・専修学校(専門課程) | 60,000円 | 720,000円 |
| 大学 | 65,000円 | 780,000円 |
| 就学支度費 | — | 500,000円(入学時のみ1回限り) |
就学支度費が入学時の資金として使えるのが、この制度の要点です。金額は都道府県社協で異なることがあります。
条件
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 利子 | 返済計画に基づけば無利子。計画期間を超過すると年利3.0%の延滞利子が加算されます |
| 据置期間 | 卒業しておおむね6か月据え置いてから償還開始 |
| 償還期間 | 20年以内(社協により、修業年限の3倍以内を原則とする運用もあります) |
| 対象 | 所得が基準以下の世帯 |
| 窓口 | 市区町村の社会福祉協議会 |
無利子であることは大きな利点ですが、延滞すると年3.0%がつきます。返済計画は、卒業後の手取りから逆算して作ってください。
誰が借りることになるか
この制度の借り方は、教育ローンとは違います。借りるのは、就学する本人です。
借受人のしくみ(大阪府社協の案内より)
| 役割 | 誰が |
|---|---|
| 借入申込者(借受人) | 就学する本人 |
| 連帯借受人 | 世帯の生計中心者(連帯債務を負います) |
| 連帯保証人 | 原則不要。ただし就学する借入申込者が成年の生計中心者である場合は必要 |
つまり親が借りて親が返す制度ではなく、本人が借り、生計中心者が連帯して負う形です。返すのは卒業した本人になります。ここを家族で共有しないまま進めると、卒業後にもめます。
大学4年で月額上限まで借りた場合の総額
- 教育支援費65,000円 × 12か月 × 4年
- 就学支度費500,000円
合計 3,620,000円。これを卒業後、本人が返します。20年で返すなら年約18万円、月約1万5千円。就職後の手取りから、この額を20年間出し続けられるかで判断してください。
借りられる額と、返せる額は別です。上限まで借りる前提で計画を立てないでください。給付型で埋まる分、アルバイトで埋まる分を先に見積もって、残りだけを借りるのが安全です。
返し方
返済で詰まりやすいところ
卒業後6か月で返済が始まる
奨学金と二重になる
延滞すると年3.0%がつく
削れるものと削れないもの
制度で埋まらない部分は、支出を減らすしかありません。削れるものと削れないものを分けてください。
進学時の初期費用の性質
| 項目 | 削れるか | 考え方 |
|---|---|---|
| 入学金・授業料 | 削れない | 減免制度の対象になるかだけを確認します |
| 敷金・礼金・仲介手数料 | △ | 物件によって大きく違います。礼金なし・仲介手数料半額の物件を条件に入れる |
| 引越し費用 | ○ | 3月下旬を外せるかで大きく変わります。入居日を1週間ずらせないか確認する |
| 家具・家電 | ○ | 一度に全部そろえない。ベッド・冷蔵庫・洗濯機・カーテンから。レンタルという選択肢もあります |
| ネット回線 | △ | 工事の要否で費用と待ち時間が変わります。物件の設備を先に確認する |
| 食費 | ○ | 自炊できる環境かどうかで年間で大きく差が出ます |
引越しの時期をずらせるかが、いちばん効きます。3月下旬は年間で最も高く、予約も取りにくい時期です。
初期費用全体の詰め方は初期費用の全体像、家具・家電の順序は家具・家電の用意にまとめています。
短い期間だけ必要な家電は、借りるという選択肢もある
買うか借りるかは、使う期間で決まります。料金と期間の条件を確認できます。
- 掲載する料金は各社公式サイトの公表値です
- 条件は住所・利用状況により変わります
- 見積もり・比較は無料です
よくある失敗
社協を第一選択だと思って行く
教育支援資金は「日本学生支援機構等が使えるまでのつなぎ」という位置づけです。先にそちらを当たったことを説明できる状態で行ってください。
日本学生支援機構の予約採用の時期を逃す
高校在学中の申込みです。逃すと在学採用まで待つことになり、入学前の資金には間に合いません。ここが最大の分岐点です。
入学前に必要な費用を、奨学金で賄うつもりでいる
奨学金の初回振込は入学後です。入学金と住まいの契約は、それより前に来ます。
上限まで借りる前提で計画する
借りられる額と返せる額は別です。返すのは卒業した本人で、返済は卒業後6か月で始まります。
引越しを3月下旬に入れる
年間で最も高く、予約も取りにくい時期です。入居日を数日ずらせないか、先に確認してください。
よくある疑問
日本学生支援機構の奨学金と併用できますか。
就学支度費だけを借りることはできますか。
親に収入があると対象外ですか。
連帯保証人を立てられません。
いつ申し込めばよいですか。
大学院は対象になりますか。
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一次情報の確認先
本ページの前提となる制度・統計は、以下の公的機関等の公表情報で確認できます。最新の内容は必ず各機関の公式ページでご確認ください。