数字の意味が分かると、比べる相手が変わる
ポータブル電源のカタログには、容量・出力・波形・サイクル数といった数字が並びます。どれが自分に関係する数字なのかが分からないと、値段でしか比べられません。ここまで見てきた法令の区分と合わせて、実際に見るべき5つを整理します。
見るべき5つの数字
カタログのどこを見るか
| 見るもの | 単位 | これで決まること |
|---|---|---|
| 容量 | Wh(ワット時) | 何をどれだけ動かせるか。飛行機に持ち込めるかも |
| 出力 | W(ワット) | 動かせる機器の種類。定格と瞬間最大は別 |
| 波形 | 正弦波/矩形波 | 精密機器・モーター製品が使えるか |
| 重さ | kg | 誰が運ぶか。持ち出す前提なら最重要 |
| サイクル数 | 回 | 何回充放電できるか。寿命の目安 |
mAh(ミリアンペア時)だけで比べないでください。電圧が違うと、同じmAhでも実際に使えるエネルギーが違います。
1. 容量(Wh)
容量はWh(ワット時)で見ます。Wh=定格電圧(V)×容量(Ah)です。mAh表示しかない場合は換算します。
容量の目安の考え方
| やりたいこと | 考え方 |
|---|---|
| スマートフォンを充電する | 端末の電池容量(Wh)× 回数 ÷ 変換ロス |
| ノートパソコンを使う | 本体の消費電力(W)× 使いたい時間(h) |
| 扇風機を一晩回す | 消費電力(W)× 時間(h) |
| 冷蔵庫を動かす | 定格だけでなく起動時の突入電流も見る |
カタログの容量がそのまま使えるわけではありません。変換のロスがあるため、実際に取り出せる量は表示より小さくなります。
そして160Whが1つの分かれ目です。国土交通省の資料は、機内持込みについて「機内持込みのモバイルバッテリーは2個(160Wh以下に限る)まで」としています。飛行機で運ぶ可能性があるなら、この線を超えるかどうかが選択を決めます。詳しくは飛行機に持ち込めるワット時定格量に整理しました。
2. 出力(W)と波形
容量が足りていても、出力が足りないと動きません。ここが分かれます。
見るのは2つ。定格出力(continuous、continuously と書かれることも)と、瞬間最大出力(surge、peak)です。モーターやコンプレッサーを使う機器は、動き始めに定格の何倍もの電力を必要とします。
波形も確かめてください。正弦波(純正弦波)と矩形波(修正正弦波)があり、精密機器やモーター製品は正弦波でないと正常に動かない、または故障することがあります。
出力で失敗するところ
定格出力だけ見て買う
起動時に落ちます。動かしたい機器の起動電力を調べてください。
波形を見ていない
医療機器、オーディオ、モーター製品は正弦波が要ることがあります。取扱説明書に指定があるか確認してください。
同時に何台つなぐか考えていない
合計が定格を超えると止まります。使う場面を具体的に想定してください。
USB出力の規格を見ていない
急速充電に対応しているか、PD対応かで充電時間が変わります。
3. 規格と表示
ここで、法令の区分が効いてきます。経済産業省のFAQは、交流100Vを出力するポータブル電源について次のように整理しています。
蓄電池の出力は原理上直流に限られており、交流が出力できるポータブル電源は蓄電池に該当しないため、モバイルバッテリーとして扱わず、非対象。
つまりコンセントの付いたポータブル電源には、モバイルバッテリーとしての丸形PSEが付いていないことがあります。これは異常ではありません。詳しくはPSEマークは何を保証しているかにまとめました。
そのうえで、表示として確認できることがあります。
実物とパッケージで確認できること
- 容量が Wh で書かれているか(mAhだけだと飛行機で困る)
- 定格出力と瞬間最大出力の両方が書かれているか
- 波形(正弦波かどうか)が明記されているか
- 製造・輸入事業者の名称が書かれているか
- PSEマークがある場合、何としてのPSEか(丸形か菱形か)
- リサイクルマークがあるか(捨てるときに効く)
- 取扱説明書に問い合わせ先が書かれているか
4. 重さと持ち運び
容量が大きいほど重くなります。誰が運ぶかで、選べる上限が決まります。
防災用として家に置くだけなら重さは問題になりません。ところが「いざというとき持って避難する」前提なら、話がまったく変わります。大容量のものは10kgを超えることがあり、高齢の家族が運べる重さではありません。
使う場面で変わる選び方
設置して常用する場合の法令上の線は蓄電池と消防法の届出にまとめました。
家に置いて停電に備える
避難時に持ち出す
車中泊・キャンプで使う
仕事の現場で使う
5. サイクル数と保証
サイクル数は「充放電を何回繰り返せるか」の目安です。数字の横に「容量の◯%を維持」という条件が付いていることが多いので、条件まで読んでください。
保証は年数だけでなく、「どこに連絡するか」が実務では重要です。NITEは事故が製品起因の場合に事業者名と型式を公表しています。逆に言えば、事業者がはっきりしない製品は、何かあったときの連絡先も、リコールの通知先もありません。
そして捨てるときにも効きます。JBRCの回収は「JBRC会員企業製であること (会員企業外品やメーカー不明品は回収対象外)」を条件にしています。メーカーがはっきりしていることは、買うときだけでなく捨てるときの条件でもあります。
法令の区分と合わせて見る
このサイトで扱った4つの区分と、選ぶときの関係
| 法令 | 関係する数字 | 選ぶときに効くこと |
|---|---|---|
| 電気用品安全法 | 400Wh/L(対象の線) | 丸形PSEの有無。交流出力があれば対象外 |
| 航空法・危険物 | 160Wh | 飛行機で運べるか。2個まで |
| 火災予防条例 | 10kWh/20kWh | 常設するとき、届出が要るか |
| 資源有効利用促進法 | — | 捨てるとき、JBRCの回収対象か |
買う前にこの4つを通しで見ると、あとで困りません。とくに「運ぶ」「常設する」「捨てる」の3つは、買ってから変えられません。
確認の順序
買う前の順序
- 何を、何時間動かしたいかを具体的に書き出す
- 必要な容量(Wh)と定格出力(W)を計算する
- 動かす機器に起動電力が大きいものが無いか確認する
- 正弦波が必要な機器が無いか確認する
- 飛行機で運ぶ可能性があるか(160Whの線)
- 事業所に常設するか(10kWh/20kWhの線)
- メーカーと問い合わせ先がはっきりしているか
- 本体にWh表示とリサイクルマークがあるか
→ PSEマークは何を保証しているか/使い終わった電池の捨て方/飛行機に持ち込めるワット時定格量/蓄電池と消防法の届出/発火はどこで起きているか/買う前に見る5つの数字
容量と出力から、用途に合うものを絞り込む
容量別のラインナップ、定格出力、波形、重さの仕様は公式サイトで確認できます。用途が決まっていれば絞り込めます。
- s
- h
- o
- u
- h
- i
- n
確認に使った一次情報
- 経済産業省「モバイルバッテリーに関するFAQ」(電気用品安全法)meti.go.jp
- 一般社団法人JBRC「不要電池の出し方(回収対象/対象外説明)」jbrc.com
- 国土交通省 航空局「モバイルバッテリーの機内持込みの新たなルールについて」mlit.go.jp
- 総務省消防庁fdma.go.jp
- 製品評価技術基盤機構(NITE)nite.go.jp
よくある疑問
mAhとWhはどちらで比べるべきですか。
容量が大きいほうが得ですか。
正弦波と矩形波の違いが分かりません。
PSEマークが付いていないポータブル電源は避けるべきですか。
安いものと高いものの違いはどこに出ますか。
防災用に買うなら何を優先しますか。
リチウムイオン電池の法令ガイドの記事一覧
一次情報の確認先
本ページの前提となる制度・統計は、以下の公的機関等の公表情報で確認できます。最新の内容は必ず各機関の公式ページでご確認ください。