線は2本ある。10キロワット時と、20キロワット時
家庭用の蓄電池を入れる、事務所に非常用電源を置く。このとき消防への届出が要るかどうかは、蓄電池の容量で決まります。線は2本あり、1本目が「規制がかかるか」、2本目が「届出が要るか」です。ここを取り違えると、工事が終わってから指摘を受けます。
2本の線
蓄電池設備は、火災予防条例で扱われます。条文を読むと、容量による区分がこう置かれています。
蓄電池設備(蓄電池容量が 10 キロワット時以下のもの及び蓄電池容量が 10 キロワット時を超え 20 キロワット時以下のもの……)
蓄電池容量による区分
| 容量 | 規制 | 届出 |
|---|---|---|
| 10kWh 以下 | 規制の対象外 | 不要 |
| 10kWh 超 〜 20kWh 以下 | 出火防止措置の基準を満たすものは対象外 | 不要 |
| 20kWh 超 | 規制の対象 | 必要 |
この区分は火災予防条例によるものです。火災予防条例は市町村ごとに定められているため、数値と運用は管轄の消防署に確認してください。
家庭用の蓄電池は、多くが10kWh前後です。だから「うちは届出が要るのか」と迷う人が多いのですが、10kWh以下なら規制の対象外という線がまずあります。
届出が要るのはどこからか
条文には、届出の対象が明示されています。
届出については 20 キロワット時を超えるものが対象となる
20kWhが届出の線です。10kWhを超えても20kWh以下であれば、出火防止措置の基準を満たすものは規制の対象外という整理になっています。
事業所で非常用電源を組む、太陽光と組み合わせて大きめの蓄電池を入れる、という場面では20kWhを超えることがあります。設計の段階で容量を確認してください。工事のあとで届出が必要と分かると、設置場所ごと見直しになることがあります。
屋外に置くときの距離
屋外設置には、距離の要件があります。
建築物から3メートル以上の距離を保たなければならない
ただし例外が続きます。
不燃材料で造り、又は覆われた外壁で開口部のないものに面するときは、この限りでない
ここが実務では効きます。「開口部のない不燃の外壁に面していれば、3mは要らない」ということです。逆に言えば、窓やドアのある壁の前には、3m離さないと置けません。
屋外設置でつまずくところ
窓の下に置こうとする
開口部のある壁面です。3mの距離が必要になりえます。設置場所は窓の位置から決めてください。
隣地との境界ぎりぎりに置く
隣の建物との関係も見られることがあります。敷地の中だけで判断しないでください。
直射日光の当たる場所に置く
法令の要件とは別に、高温はリチウムイオン電池にとって最も避けたい条件です。
あとから物置やカーポートを建てる
設置時は条件を満たしていても、あとから建てた構造物で条件が変わることがあります。
屋内に置くとき
屋内設置については、条文が他の条(危険物や発電設備の規定)を準用する形になっています。つまり単独で読んでも要件が分かりません。
実務としては、設置業者に「この容量で、この場所に置く場合、消防への届出と工事の要件はどうなりますか」と書面で確認してもらうのが確実です。口頭で「大丈夫です」と言われた場合は、何を根拠に大丈夫なのかを聞いてください。
開放型鉛蓄電池については、条文に具体的な指定があります。
その電槽は、耐酸性の床上又は台上に設けなければならない
リチウムイオン蓄電池ではありませんが、「電池の種類によって求められる床の作りが違う」という例として押さえておくと、業者との話が通じます。
ポータブル電源は対象になるか
持ち運べるポータブル電源は、「設備」として固定設置するものとは扱いが違います。家庭用のポータブル電源は容量がおおむね1kWh前後で、10kWhの線に遠く届きません。
ただし、次の場合は話が変わります。
ポータブル電源でも確認が要る場面
迷ったら管轄の消防署の予防課に電話してください。「容量◯kWhのものを◯台、どこに置く」と具体的に伝えれば、その場で答えが返ってきます。
事業所に何台もまとめて置く
倉庫で保管・在庫として置く
充電しながら常時設置している
避難所や集会所に備蓄する
管轄の消防署に聞くこと
問い合わせの順序
- 先に数字をそろえる蓄電池容量(kWh)、台数、設置場所(屋内か屋外か)、建物の用途。これが無いと答えようがありません。
- 管轄の消防署の予防課に電話する市区町村の消防本部でも取り次いでもらえます。
- 届出の要否を聞く「この容量・この設置で、届出は必要ですか」と具体的に聞きます。
- 必要なら様式と提出時期を聞く着工前に出すものか、完成後かで段取りが変わります。
- 屋外なら距離の条件を確認する設置予定の壁に開口部があるかどうかを伝えてください。
- 業者の説明と突き合わせる業者の説明と消防署の回答が食い違ったら、消防署の回答が優先です。
確認の順序
蓄電池を入れる前に確認すること
- 蓄電池容量(kWh)を仕様書で確認する。カタログの数値と実機を照合する
- 10kWh以下か、10〜20kWhか、20kWh超かを判定する
- 20kWhを超えるなら、着工前に届出の段取りを組む
- 屋外なら、設置予定の壁に開口部があるかを見る
- 屋内なら、業者に要件を書面で示してもらう
- 管轄の消防署の予防課に、数字を添えて確認する
- 太陽光や他の設備と合わせた合計容量でも確認する
→ PSEマークは何を保証しているか/使い終わった電池の捨て方/飛行機に持ち込めるワット時定格量/蓄電池と消防法の届出/発火はどこで起きているか/買う前に見る5つの数字
まず必要な容量を、用途から決める
何を何時間動かしたいかで必要な容量が決まります。容量別のラインナップと出力の仕様は公式サイトで確認できます。
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確認に使った一次情報
- 経済産業省「モバイルバッテリーに関するFAQ」(電気用品安全法)meti.go.jp
- 一般社団法人JBRC「不要電池の出し方(回収対象/対象外説明)」jbrc.com
- 国土交通省 航空局「モバイルバッテリーの機内持込みの新たなルールについて」mlit.go.jp
- 総務省消防庁fdma.go.jp
- 製品評価技術基盤機構(NITE)nite.go.jp
よくある疑問
家庭用の蓄電池でも届出が要りますか。
届出を出さずに設置したらどうなりますか。
賃貸の建物に置く場合は誰が届け出ますか。
複数台に分ければ規制を避けられますか。
太陽光発電と組み合わせる場合は何が変わりますか。
消防署に相談するのは工事のどの段階ですか。
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一次情報の確認先
本ページの前提となる制度・統計は、以下の公的機関等の公表情報で確認できます。最新の内容は必ず各機関の公式ページでご確認ください。