事故の多くは、充電中に起きている
リチウムイオン電池の火災は「安い製品だから」「使い方が乱暴だから」と語られがちです。ところが公表されている数字を見ると、起きている場所と時間帯にはっきりした偏りがあります。NITE(製品評価技術基盤機構)と消費者庁の資料から、事実だけを並べます。
何件起きているか
NITEは2026年7月に出した注意喚起で、件数を示しています。
2021年から2025年までの5年間にNITE(ナイト)に通知された製品事故情報では、「リチウムイオン電池搭載製品」の事故は2140件あり
製品別ではモバイルバッテリーが最多とされています。5年で2140件は、単純に割ると年400件を超える数字です。
8月にピークが来る
事故発生件数は春から夏にかけて気温の上昇とともに増加する傾向を示しており、8月にピークを迎えます。
この一文が、対策の方向を決めます。温度が引き金になっているということです。
夏に危ない置き場所
NITEは「高温となる場所では使用・保管しない」としています。夏の車内は、この条件に最も当てはまります。
車の中
窓際・カーテンの内側
布団・ソファ・クッションの上
暖房器具・調理器具の近く
どの製品で起きているか
消費者庁は、身に着ける・持ち歩く製品に絞った注意喚起を出しています。
2020年度から2024年度までの5年間で計162件登録されている
リチウムイオン電池に起因すると考えられるものは5年間で計136件と84.0%を占め、近年増加傾向にあります
ワイヤレスイヤホンは64件、スマートウォッチは46件、携帯用扇風機は26件となっており、いずれも増加傾向が見られます
消費者庁の資料が挙げている製品と件数(5年間)
| 製品 | 件数 | 備考 |
|---|---|---|
| ワイヤレスイヤホン | 64件 | 増加傾向 |
| スマートウォッチ | 46件 | 増加傾向 |
| 携帯用扇風機 | 26件 | 増加傾向 |
出典:消費者庁「リチウムイオン電池使用製品による発火事故に注意しましょう」。モバイルバッテリーだけの問題ではありません。
ここは見落とされます。「バッテリーを気をつければよい」ではなく、電池が入っている身の回りの製品すべてが対象だということです。イヤホンも時計も扇風機も、中身はリチウムイオン電池です。
充電中の割合
消費者庁は、事故が起きたときの状況も数字で示しています。
事故が発生した時に充電中だった件数は、5年間でワイヤレスイヤホンでは37件(75.5%)、スマートウォッチでは9件(20.5%)、携帯用扇風機では16件(84.2%)
ワイヤレスイヤホンで75.5%、携帯用扇風機で84.2%が充電中。圧倒的に充電中です。
だから対策は1つに絞れます。充電しているところが見える状態にする。消費者庁のアドバイスにも「充電は、安全な場所で、なるべく起きている時に行いましょう」とあります。
充電のしかたで見直すところ
寝ている間に枕元で充電する
気づけない時間帯です。起きている間に、目の届く場所で充電してください。
外出中に充電しっぱなしにする
誰もいない家で発火すると、初期消火ができません。
充電したまま布団やソファの上に置く
熱がこもるうえ、燃えるものに囲まれています。
純正でない充電器を使い続ける
電圧・電流が合わない充電は、電池に負荷をかけます。
ケーブルの根元が傷んだまま使う
接触不良は発熱の原因になります。差し込み口がぐらつくものは替えてください。
NITEが示す3つのC
NITEは事故を防ぐ考え方を3つに整理しています。
3つのC
| 英語 | 中身 | |
|---|---|---|
| 賢く選ぶ | Cool Choice | 購入前に販売事業者の情報とリコール情報を確認する |
| 丁寧に使う | Careful use | 「高温となる場所では使用・保管しない」「強い衝撃や圧力を加えない」 |
| 正しく捨てる | Correct disposal with better recycling | 廃棄方法を確認してから捨てる |
出典:NITE「『夏バテ(夏のバッテリー)』にご注意を」。3つ目の「捨てる」まで含めているところが要点です。
3つ目は使い終わった電池の捨て方にまとめました。JBRCの回収には条件があり、膨らんだものは通常の回収ルートに乗りません。
消費者庁のアドバイス7項目
消費者庁は、消費者向けに7つを挙げています。原文のまま並べます。
消費者庁が挙げている7項目
- 強い衝撃や圧力を加えないようにしましょう
- 高温になる場所では使用・保管しないようにしましょう
- 充電は、安全な場所で、なるべく起きている時に行いましょう
- 異常を感じたら使用を中止しましょう
- 発火した時はまず安全を確保し、できれば大量の水で消火しましょう
- 製品情報、リコール情報を確認しましょう
- 公共交通機関では、持ち込みルールを守りましょう
5つ目に注意が要ります。「まず安全を確保し」が先に来ています。消そうとするより先に離れる、人を逃がす、という順序です。そのうえで可能なら大量の水、とされています。少量の水をかけるのは、かえって危険なことがあります。
7つ目は飛行機に持ち込めるワット時定格量にまとめました。2026年4月24日からルールが変わっています。
ごみ収集車と処理施設での発火
NITEは、ごみ収集車や処理施設での発火についても事例を公開しています。捨てたあとに起きる事故です。
これは家庭の中だけの問題ではありません。収集する人、処理施設で働く人が巻き込まれます。全国の自治体が繰り返し注意を出しているのはそのためです。
捨て方の条件はこちらにまとめました。端子を絶縁テープでふさぐ、分解しない、異常があるものは自治体に相談する。この3つを守るだけで、多くが防げます。
確認の順序
いま家でできること
- 充電する場所を1か所に決める。硬く平らで、燃えるものが周りに無い場所
- 寝る前・外出前の充電をやめる
- 夏場、車の中に置きっぱなしにしていないか確認する
- イヤホン・スマートウォッチ・携帯扇風機も同じ扱いにする
- 膨らんでいるもの、熱くなるものが無いか、手に取って確かめる
- 買った製品のリコール情報を確認する
- 使わなくなったものを、正しい方法で処分する
→ PSEマークは何を保証しているか/使い終わった電池の捨て方/飛行機に持ち込めるワット時定格量/蓄電池と消防法の届出/発火はどこで起きているか/買う前に見る5つの数字
事業者と型式がはっきりしている製品を選ぶ
販売事業者の情報が明確な製品は、リコールが出たときに情報が届きます。容量別のラインナップと仕様は公式サイトで確認できます。
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確認に使った一次情報
- 経済産業省「モバイルバッテリーに関するFAQ」(電気用品安全法)meti.go.jp
- 一般社団法人JBRC「不要電池の出し方(回収対象/対象外説明)」jbrc.com
- 国土交通省 航空局「モバイルバッテリーの機内持込みの新たなルールについて」mlit.go.jp
- 総務省消防庁fdma.go.jp
- 製品評価技術基盤機構(NITE)nite.go.jp
よくある疑問
膨らんでいますが、まだ使えます。使い続けてよいですか。
発火したらどうすればよいですか。
純正の充電器でないと危険ですか。
何年くらいで買い替えるべきですか。
リコール情報はどこで見られますか。
子どもが使う製品でも同じ注意が要りますか。
リチウムイオン電池の法令ガイドの記事一覧
一次情報の確認先
本ページの前提となる制度・統計は、以下の公的機関等の公表情報で確認できます。最新の内容は必ず各機関の公式ページでご確認ください。