8日で終わりでは、ない
クーリング・オフの期間が過ぎた。それで打ち切りだと思われがちですが、特定商取引法には期間の違う制度が並んでいます。次々に契約させられた場合は1年。うそを告げられた場合は取消し。解除されたあとの請求にも上限があります。原文で確かめます。
期間の違う3つの制度
訪問販売で使える主な制度と、その期間
| 制度 | 条文 | 期間 | 何が必要か |
|---|---|---|---|
| クーリング・オフ | 法第9条 | 書面を受け取った日から8日 | 理由は不要 |
| 過量販売の解除 | 法第9条の2 | 契約締結後1年 | 通常必要とされる量を著しく超えること |
| 取消し | 法第9条の3 | — | 事実と違うことを告げられた/故意に事実を告げられなかった |
出典:消費者庁 特定商取引法ガイド「訪問販売」。取消権の行使期間については、条文と個別の事案によります。消費生活センターにご確認ください。
8日が過ぎたら、下の2つを順に見ていくことになります。
過量販売の解除(1年)
消費者庁の記載を原文で引きます。
訪問販売の際、消費者が通常必要とされる量を著しく超える商品(役務・政令で定める権利)を購入する契約を結んだ場合、契約締結後1年間は、契約の申込みの撤回又は契約の解除ができます(消費者にその契約を結ぶ特別の事情があったときは例外です。)。
この際の清算ルールは、クーリング・オフと原則同様の清算ルールが適用されます。
2つ、押さえるところがあります。
過量販売の解除で確認すること
| 内容 | |
|---|---|
| 期間 | 契約締結後1年(クーリング・オフの起算日とは違い、契約した日から) |
| 条件 | 通常必要とされる量を著しく超えること |
| 例外 | 消費者にその契約を結ぶ特別の事情があったとき |
| 清算 | クーリング・オフと原則同様(対価を払う必要がない・無償で原状回復) |
出典:消費者庁 特定商取引法ガイド「訪問販売」。「著しく超える」かどうかの判断は個別の事案によります。消費生活センターにご相談ください。
清算ルールがクーリング・オフと同じ、というのが大きい。1年以内なら、工事が終わっていても対価を払わずに済む可能性があります。→ 工事が始まっていても取り消せる
「次々販売」がこれにあたる
国民生活センターが公表した相談事例の3番目は、こうでした。
屋根や外壁、床下等の修繕を次々と勧誘され契約した。
そして勧誘トークの分類にも「次々に違う工事やサービスを勧誘するトーク」が挙がっています。
どういう形が問題になりうるか
どれも個別の判断が必要です。契約書と請求書をそろえて消費生活センターに相談してください。
屋根を直したあと、外壁も、床下も勧められた
国民生活センターの事例3がこの形です。それぞれの契約は8日を過ぎていても、全体として「通常必要とされる量を著しく超える」かどうかが問われます。契約書を全部そろえて相談してください。
同じ商品を何度も買わされた
布団、健康食品など。1人で使う量として著しく超えているかが問われます。
1回の契約だが、内容が過大だった
過量販売は複数回の契約に限られていません。1回でも「通常必要とされる量を著しく超える」なら対象になりえます。
必要があってまとめて買った
消費者庁は「消費者にその契約を結ぶ特別の事情があったときは例外です」と書いています。事情があれば解除できない場合があります。
取消権(法第9条の3)
期間ではなく「何を言われたか」で使える制度です。原文を引きます。
事業者が、契約の締結について勧誘する際、以下のような行為をしたことにより、消費者がそれぞれ以下のような誤認をすることによって契約の申込みやその承諾の意思表示をしたときには、その意思表示を取り消すことができます。
・事実と違うことを告げられた場合であって、その告げられた内容が事実であると誤認した場合
・故意に事実を告げられなかった場合であって、その事実が存在しないと誤認した場合
2つ目の「故意に事実を告げられなかった」が効きます。言われたことがうそだった場合だけでなく、言われなかったことが問題になる場合があります。
2つの類型
| 類型 | 何が起きたか |
|---|---|
| 不実告知 | 事実と違うことを告げられた/それを事実だと思って契約した |
| 故意の事実不告知 | 事実を故意に告げられなかった/その事実が無いと思って契約した |
出典:消費者庁 特定商取引法ガイド「訪問販売」。取消しが認められるかどうかは事実関係によります。言われた言葉・言われなかったことを記録して相談してください。
点検商法の文脈でいえば、「このままだと瓦が飛ぶ」が事実と違っていた場合、「保険金が下りなかった場合は自己負担になる」と告げられなかった場合——これらが問題になりえます。
勧められた設備が本当に必要かを、自分で比べてみる
停電への備えは、据置きの設備でなくても取れる手段があります。容量と価格を自分で確認できます。
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解除されたあとの請求には上限がある
クーリング・オフ期間が過ぎたあと、こちらの支払いが遅れたことを理由に業者が解除した場合の話です。法第10条が請求できる額に上限を置いています。
クーリング・オフ期間の経過後、例えば代金の支払遅延等、消費者の債務不履行を理由として契約が解除された場合には、事業者から法外な損害賠償を請求されることがないように、特定商取引法は、事業者が以下の額を超えて請求できないことを定めています。
事業者が請求できる額の上限(法第10条)
| 状況 | 上限 |
|---|---|
| 商品(権利)が返還された場合 | 通常の使用料の額(販売価格から転売可能価格を引いた額が使用料を超えるときはその額) |
| 商品(権利)が返還されない場合 | 販売価格に相当する額 |
| 役務を提供した後である場合 | 提供した役務の対価に相当する額 |
| 商品をまだ渡していない(役務を提供する前) | 契約の締結や履行に通常要する費用の額 |
出典:消費者庁 特定商取引法ガイド「訪問販売」。「これらに法定利率による遅延損害金の額が加算されます」と記載されています。
4つ目が効きます。工事が始まる前に解除された場合、請求できるのは「契約の締結や履行に通常要する費用の額」までです。契約金額の全額ではありません。
どれを使うかの見分け方
上から順に確認する
- 法定の書面を受け取ってから8日以内かクーリング・オフ(法第9条)。理由は要りません。
- 8日を過ぎているが、うそを告げられて言い出せなかったかクーリング・オフが期間経過後もできる場合があります。
- 契約から1年以内で、量が過大か過量販売の解除(法第9条の2)。清算はクーリング・オフと同様。
- 勧誘のときに事実と違うことを告げられたか/告げられなかったか取消し(法第9条の3)。
- 解除されて高額な請求が来ているか請求額に上限があります(法第10条)。
- どれに当たるか分からない消費者ホットライン188。契約書と記録を持って相談してください。
確認の順序
8日を過ぎたと気づいたら
- 法定の書面を本当に受け取ったかを確認する(受け取っていなければ起算していない可能性)
- 「クーリング・オフできない」と言われていないかを思い出す
- 契約日から1年以内かを確認する
- 同じ業者と何件契約したかを数える
- 勧誘のときに言われたこと・言われなかったことを書き出す
- 請求書が来ているなら内訳を確認する
- 消費者ホットライン188に、契約書を全部持って相談する
→ 家に来ていなくても訪問販売になる/点検商法の実態/工事が始まっていても取り消せる/8日を過ぎたあと/断り方と記録/窓口は2つある
確認に使った一次情報
- 消費者庁「特定商取引法ガイド 訪問販売」https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/doortodoorsales/
- 独立行政法人国民生活センター「屋根工事の点検商法のトラブルが増えています-典型的な勧誘トークを知っておくことで防げます!-」(2023年10月11日公表)https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20231011_1.html
- 公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センター「住まいるダイヤル」https://www.chord.or.jp/
よくある疑問
1年を過ぎていたらもう何もできませんか。
「著しく超える」かどうかは誰が判断しますか。
複数の業者と契約しています。
うその証拠がありません。
業者が「解除するなら違約金」と言っています。
クレジットで払っています。
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一次情報の確認先
本ページの前提となる制度・統計は、以下の公的機関等の公表情報で確認できます。最新の内容は必ず各機関の公式ページでご確認ください。