一度断れば、もう来てはいけない
断ったのにまた来る。特定商取引法は、契約締結の意思がないことを示した相手への勧誘を禁止しています。その訪問の場で続けることも、日を改めて来ることも、どちらもです。問題は「断ったこと」が残っているかどうか。条文と、記録の取り方を整理します。
再勧誘の禁止(法第3条の2)
消費者庁の記載を原文で引きます。
事業者は、訪問販売をしようとするときは、勧誘に先立って消費者に勧誘を受ける意思があることを確認するように、努めなければなりません。
消費者が契約締結の意思がないことを示したときには、その訪問時においてそのまま勧誘を継続すること、その後改めて勧誘することが禁止されています。
前半と後半で、強さが違います。
法第3条の2の2つの部分
| 内容 | 強さ | |
|---|---|---|
| 前半 | 勧誘に先立って、勧誘を受ける意思があることを確認する | 努力義務(「努めなければなりません」) |
| 後半 | 意思がないことを示した相手に、その場で続ける/後日改めて勧誘する | 禁止 |
出典:消費者庁 特定商取引法ガイド「訪問販売」。「断った」という事実が起点になります。
だから、断ったことをはっきりさせるのが先です。あいまいに終わらせると、後半の禁止が働きにくくなります。
勧誘の前に名乗る義務がある
法第3条は、話し始める前に何を告げるべきかを定めています。
事業者は、訪問販売をしようとするときは、勧誘に先立って、消費者に対して以下のことを告げなければなりません。
・事業者の氏名(名称)
・契約の締結について勧誘をする目的であること
・販売しようとする商品(権利、役務)の種類
「勧誘に先立って」です。点検が終わってから会社名を名乗る、話が進んでから「実は工事の話で」と切り出す——この順序なら、法第3条の話になります。
玄関で最初に確認できる3つ
| 聞くこと | 根拠 |
|---|---|
| 「会社名を教えてください」 | 法第3条(事業者の氏名・名称) |
| 「契約の勧誘ですか」 | 法第3条(勧誘目的であること) |
| 「何を売る話ですか」 | 法第3条(商品・役務の種類) |
この3つは事業者が自分から告げなければならないものです。聞かないと出てこないなら、その時点で順序が違っています。
どう言えば「意思を示した」ことになるか
法律は言い方を指定していません。ここに挙げるのは一般的な例であり、消費者庁が示したものではありません。
言い方と、残り方
| 言い方 | どうなりやすいか |
|---|---|
| 「結構です」 | 「点検は結構だが話は聞く」と受け取られうる |
| 「今は忙しいので」 | 「後日なら」と受け取られうる |
| 「考えておきます」 | 断ったことにならない |
| 「契約するつもりはありません」 | 意思を示したことが明確 |
| 「勧誘はお断りします。お引き取りください」 | 同上 |
「契約するつもりはない」という言葉が入っているかどうかが分かれ目になります。個別の事案でどう判断されるかは、消費生活センターにご確認ください。
断り文句を工夫する必要はありません。「契約するつもりはありません」を1つ覚えておけば足ります。そのあと会話を続けないことのほうが大事です。
玄関先でできること
玄関での順序
- ドアを開ける前に用件を聞くインターホン越しで足ります。会社名と用件を先に聞く。
- 点検・調査を承諾しない国民生活センターのアドバイスは「突然訪問してきた業者には安易に点検させないようにしましょう」から始まります。
- 「契約するつもりはありません」と言うこれが法第3条の2の起点になります。
- 会話を続けない理由を説明すると、そこから話が戻ります。
- その場で日付と会社名を書き留めるまた来たときに効きます。
- 居座られたら警察に連絡する身の危険を感じる場合は迷わず110番。契約の問題は消費生活センターです。
家の困りごとは、自分から選んで頼む
ハチの巣など急ぐ用件も、作業内容と料金を事前に確認したうえで依頼できます。
- k
- u
- r
- a
- s
- h
- i
記録の取り方
訪問があったら書き留めること
- 日付と時刻
- 会社名(名乗らなかったなら「名乗らなかった」と書く)
- 担当者の名前・人数
- 最初に何と言って訪ねてきたか(「近所で工事の挨拶に」など、そのままの言葉で)
- 点検させたかどうか
- 自分が何と言って断ったか
- 渡された名刺・チラシ・見積書(捨てない)
「そのままの言葉で」が大事です。要約すると意味が変わります。国民生活センターが勧誘トークを分類できているのは、相談者がそのままの言葉を伝えているからです。
また来たとき
一度断ったのに再訪された場合、それ自体が法第3条の2に触れる可能性があります。
再訪されたときの選択肢
玄関を開けない
インターホンで「前回お断りしています」と伝えれば足ります。会話を続ける必要はありません。
日付を記録する
1回目に断った日と、2回目に来た日。この2つがそろっていることが相談のときに効きます。
消費生活センターに伝える
契約していなくても相談できます。「断ったのに再訪された」という情報自体が、行政の把握するデータになります。
居座られた/脅された
身の危険を感じるなら警察(110番)。消費者庁は、威迫して困惑させる行為を禁止行為として挙げています。
高齢の家族がいる家庭で
国民生活センターの数字では、屋根工事の点検商法の契約当事者の8割超が60歳以上です。→ 点検商法の実態
先に共有しておくとよいこと
- 「突然来た人を屋根や床下に入れない」——これを1つだけ決めておく
- 「契約するつもりはありません」という言い方を伝えておく
- 契約書が来たらすぐ見せてもらう約束をする(8日の期限があるため)
- 消費者ホットライン188を電話に登録しておく
- 訪問があったら電話する、と決めておく
細かい知識より、1つだけ決めておくほうが残ります。
確認の順序
訪問を受けたとき
- ドアを開ける前に会社名と用件を聞く
- 勧誘目的を先に告げたかを確認する(法第3条)
- 点検・調査を承諾しない
- 「契約するつもりはありません」と言う
- 日付・会社名・言われた言葉を書き留める
- また来たら1回目の日付とともに記録する
- 困ったら消費者ホットライン188
→ 家に来ていなくても訪問販売になる/点検商法の実態/工事が始まっていても取り消せる/8日を過ぎたあと/断り方と記録/窓口は2つある
確認に使った一次情報
- 消費者庁「特定商取引法ガイド 訪問販売」https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/doortodoorsales/
- 独立行政法人国民生活センター「屋根工事の点検商法のトラブルが増えています-典型的な勧誘トークを知っておくことで防げます!-」(2023年10月11日公表)https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20231011_1.html
- 公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センター「住まいるダイヤル」https://www.chord.or.jp/
よくある疑問
「お断りします」のステッカーを貼れば来なくなりますか。
断ったのに何度も来ます。
点検だけならと思って上がらせてしまいました。
契約書にサインしてしまいました。
家族が留守中に契約していました。
会社名を名乗りませんでした。
訪問販売と点検商法の法令ガイドの記事一覧
一次情報の確認先
本ページの前提となる制度・統計は、以下の公的機関等の公表情報で確認できます。最新の内容は必ず各機関の公式ページでご確認ください。