回線を選ぶ前に
引けるかどうかを確かめる
賃貸で光回線のトラブルが起きるのは、ほぼ申し込んでから「引けない」と分かるときです。順番を逆にします。
回線の比較サイトは「どこが安いか」を書きますが、賃貸で本当に問題になるのは料金ではありません。穴を開けてよいか、光コンセントはあるか、退去のときに戻すのか——この4つが決まらないと、どこと契約しても同じところで止まります。
確認する順番
この順番でしか進みません。逆にすると、申し込んでから戻ることになります。
賃貸で光回線を引くときの順番
- ① 賃貸借契約書を読む「造作」「工作物の設置」「原状回復」の条項を先に見ます。許可の要否がここに書いてあることがあります。
- ② 管理会社(または所有者)に確認する「光回線を引きたい」ではなく「どの工事なら可か」と聞きます。聞き方でほぼ結果が決まります。
- ③ 建物にすでに何が入っているかを調べる光コンセントの有無と、共用部までの配線方式。ここで工事の量が変わります。
- ④ 提供エリアと建物名を事業者に照会するエリア内でも、その建物に導入できないことがあります。
- ⑤ 申し込み、工事日を決める立会いが必要かどうかを、この時点で確認します。
- ⑥ 退去時の扱いを決めておく撤去するのかしないのか。入居中に決めておくほうが安全です。
①と②を飛ばすのが、いちばん多い失敗です。工事業者が当日に来て「管理会社の許可が確認できないので作業できません」と帰る、という事態はここから起きます。
1. 誰の許可が要るか
賃貸で光回線を引くとき、許可を出せる人は「建物の所有者」です。ただし、入居者が直接所有者とやりとりすることは普通ありません。実務上の窓口は次のどれかになります。
誰に聞けばよいか
| 窓口 | どういう立場か | 注意 |
|---|---|---|
| 管理会社 | 所有者から管理を委託されている。多くの賃貸はここが窓口 | 管理会社が独断で決められない工事もあり、所有者へ確認する時間がかかる |
| 大家(所有者本人) | 個人所有の小規模物件では直接連絡することがある | 口頭の許可は後で残らない。書面かメールで残す |
| 分譲マンションの管理組合 | 分譲を借りている場合、共用部の工事は管理組合の管轄 | 所有者(貸主)の許可だけでは足りないことがある |
| UR・公社などの公的賃貸 | 運営主体が独自の基準を持っている | 公式の案内に工事条件が明記されていることが多い |
分譲マンションの賃貸では「貸主の許可」と「管理組合の承認」が別に必要になる場合があります。
詳しい聞き方は許可の取り方のページで扱います。
2. 建物に何が入っているか
「光回線を引く工事」といっても、建物の状況によって工事の量が4段階に変わります。
→ 図は横にスクロールできます
- 光コンセントがある室内まで光ファイバーが来ている。機器をつなぐだけで済むことがある
- 共用部まで来ている建物には導入済み。部屋までの引き込み工事が要る
- 建物に未導入共用部への導入から必要。所有者の判断が要る
- 導入できない設備・構造・所有者の方針により不可
室内に光コンセントがあっても、契約や配線方式が合わず工事が必要になることがあります。
ここを確かめずに申し込むと、「工事費無料」の条件から外れて費用が発生することがあります。光コンセントの見分け方は光コンセントのページに分けました。
建物名と住所で、提供状況を確認する
提供エリア内でも、建物の設備状況により導入できない場合があります。工事の要否は事業者の判定によります。
- 料金・工事費・提供エリアは各社公式サイトの最新情報をご確認ください
- 工事の可否は建物の設備状況により異なります
- 契約前に管理会社・所有者の許可をご確認ください
3. 工事で実際に何をするか
入居者がいちばん心配するのは「穴を開けるのか」です。結論から言うと、開けずに済む場合があります。
工事で建物に触る可能性がある箇所
- 屋外から室内への引き込み口(エアコンダクト・換気口・既存の配管を通せることがある)
- ケーブルを固定するためのビス止め(両面テープや配線モールで代替できる場合がある)
- 光コンセントの新設(壁面に設置する)
- 共用部の配線ラック・MDF室(ここは入居者ではなく建物側の管轄)
どこまでが「原状回復が必要な変更」にあたるかは、入居時の契約と、管理会社の判断で決まります。工事業者が判断することではありません。詳細は穴あけのページと立会いのページで扱います。
工事の当日は何をするのか
工事と聞くと大がかりに思えますが、やることは決まっています。順に見ておくと、当日に何を判断すればよいかが分かります。
工事当日の流れ(一般的な例)
- ① 業者が到着し、作業内容を説明するここで引き込み経路と固定方法が示されます。許可の条件と合っているかを確認します。
- ② 屋外の作業電柱や建物の引き込み口からケーブルを引きます。集合住宅では共用部の作業が入ります。
- ③ 室内への引き込み既存の配管・ダクトを通すか、新しく開けます。ここが許可の論点です。
- ④ 光コンセントの設置と機器の接続壁面に設置し、回線終端装置(ONU)につなぎます。
- ⑤ 動作確認実際に通信できるかをその場で確認します。ここで確認しないと、後日また来てもらうことになります。
所要時間は工事の内容によって変わります。事業者が案内する目安に余裕を足して予定を組んでください。本サイトでは事業者ごとの所要時間は扱いません。
「マンションタイプ」と「戸建てタイプ」の違い
集合住宅に住んでいても、必ずマンションタイプになるとは限りません。ここが分かりにくいところです。
2つのタイプの考え方
| タイプ | どういうものか | 使えるかどうかの決まり方 |
|---|---|---|
| マンションタイプ(集合住宅向け) | 建物に1本引き込み、共用部から各戸へ分ける | 建物として導入されているかで決まる。入居者が選べない |
| ファミリータイプ(戸建て向け) | その部屋まで直接1本引く | 建物の構造と所有者の許可による。集合住宅でも使えることがある |
同じ建物でも、導入状況によってどちらになるかが変わります。事業者に照会してください。
小規模なアパートでは、建物としての導入がなく、戸建て向けの契約を1部屋だけに引く形になることがあります。この場合、共用部ではなく専有部への引き込みになるため、許可の話が変わります。管理会社に確認するときは「戸建てタイプを1部屋に引く形でも可能か」まで聞いておくと、あとで戻りません。
4. 退去のときどうするか
これを入居中に決めておくと、退去時に揉めません。判断の土台になるのは、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)です。ガイドラインは原状回復を次のように定義しています。
賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること
国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)
つまり経年変化と通常の使用による損耗は、賃借人の負担ではありません(ガイドラインはこれを「賃料に含まれるもの」としています)。ただし、入居者が自分の意思で設置した設備は「通常の使用による損耗」とは別の話になります。ここが撤去工事の論点です。撤去工事のページで詳しく整理します。
引けないと分かったとき
許可が下りない、設備がない、工事日が間に合わない——このどれかに当たることは珍しくありません。そのときの選択肢は「あきらめる」ではなく「工事のいらない回線にする」です。
工事不要の回線(ホームルーター・モバイル回線)は、コンセントに挿すだけで使えます。光回線と比べたときの違いは工事ができないときのページに、判断の順序つきでまとめました。
工事不要で使える回線の提供状況を確認する
電波状況は住所・建物・階数により異なります。実際の速度は環境によって変わります。
- 提供エリア・通信速度は各社公式サイトの公表値です
- 電波状況は住所や建物により異なります
- 契約内容は公式サイトでご確認ください
よくある疑問
申し込んでから許可を取っても間に合いますか。
光コンセントがあれば、工事は必要ありませんか。
工事を申し込んだ後でやめられますか。
退去のとき、必ず撤去しなければいけませんか。
管理会社に断られたら、それで終わりですか。
賃貸の回線工事と手続きガイドの記事一覧
一次情報の確認先
本ページの前提となる制度・統計は、以下の公的機関等の公表情報で確認できます。最新の内容は必ず各機関の公式ページでご確認ください。