撤去するかどうかを決めるのは建物の側
「光回線は退去時に撤去しないといけないのか」——これに一律の答えはありません。決めるのは回線事業者ではなく、建物の所有者・管理会社です。だから、退去の直前に事業者へ聞いても答えは出ません。
誰が決めるのか
撤去をめぐる登場人物
| 誰 | 何を決めるか | 決められないこと |
|---|---|---|
| 建物の所有者・管理会社 | 設備を残してよいか、撤去を求めるか | 撤去の技術的な方法 |
| 回線事業者 | 撤去工事を行うかどうか、その費用 | 建物として残してよいかどうか |
| 入居者 | どちらの意向にも従って手配する | 自分の判断だけで残す・撤去することはできない |
回線事業者に「撤去は必要ですか」と聞いても、建物の方針は答えられません。順番が逆です。
したがって最初に聞くのは管理会社です。そのうえで、撤去が必要なら回線事業者に手配します。
原状回復のガイドラインではどうなるか
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)は、原状回復を次のように定義しています。
賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること
国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)
この定義から、経年変化と通常の使用による損耗は賃借人の負担ではありません。ガイドラインはこれらを「賃料に含まれるもの」と整理しています。
ただし、光回線の設備は「使っていたら自然に生じた損耗」ではなく、入居者が自分の意思で新たに設置したものです。ここが分かれ目になります。
状況別の考え方
入居前から設備があり、それを使っただけ
許可を取って、自分で新規に引いた
無断で引いた
特約で「撤去は借主負担」と書かれている
撤去しない場合に何が起きるか
実務では、設備を残したまま退去する(残置)ことが認められる物件も多くあります。次の入居者がそのまま使えるためです。
ただし残置が認められるかは物件次第で、認められないのに残して退去すると、後から撤去費用を請求されることがあります。「みんな残している」は根拠になりません。
残置で退去する前に確認すること
- 管理会社が残置を認めていること(書面かメールで残す)
- 回線の解約手続きは別に行うこと(設備を残すことと、契約を続けることは別)
- 貸与されている機器(ONU・ルーター)は返却が必要なこと
- 室内に残る配線・モールの扱い
いちばん多い取りこぼしは、機器の返却です。ONUなどは事業者からの貸与品で、返さないと請求が発生することがあります。設備を残すことと、機器を返さないことは別の話です。
入居中に確認しておくこと
退去は数年後で、担当者は変わります。引いたときに聞いておけば数十秒で済む話が、退去時には交渉になります。
引くときに一緒に聞いておく
- ① 退去時に撤去が必要か「残置でよろしいでしょうか、それとも撤去が必要でしょうか」
- ② 撤去が必要な場合、誰が費用を負担するか「撤去費用の負担はどちらになりますでしょうか」
- ③ 返答をメールで残す電話で聞いたら、内容をメールで送って返信をもらいます。
退去が決まってからの順番
退去のときの順番
- ① 管理会社に撤去の要否を確認するここが起点です。事業者に先に連絡しても決まりません。
- ② 回線の解約手続きをする解約の申し出から実際の停止まで日数がかかります。早めに。
- ③ 撤去が必要なら工事を手配する工事の枠が埋まっていることがあります。退去日から逆算してください。
- ④ 貸与機器を返却する返却方法と期限を確認します。
- ⑤ 引っ越し先の回線を手配する退去と入居が同時期なら、新居側の許可の確認も並行して進めます。
③は間に合わないことが実際に起きます。退去日が決まったら、その週のうちに①を済ませてください。
引っ越し先の住所で、提供状況と工事の要否を確認する
新居側の工事にも許可と日程が要ります。退去の手続きと並行して進めてください。
- 料金・工事費・提供エリアは各社公式サイトの最新情報をご確認ください
- 工事の可否は建物の設備状況により異なります
- 契約前に管理会社・所有者の許可をご確認ください
自分で外してはいけない理由
「ケーブルを引き抜くだけでは」と思われがちですが、やらないでください。理由は3つあります。
自分で撤去してはいけない理由
| 理由 | 何が起きるか |
|---|---|
| 設備が自分のものではない | 屋外の配線・共用部の設備は回線事業者の資産です。破損させれば賠償の話になります |
| 建物を傷める | 無理に引き抜くと、外壁や配管、他の入居者の配線を巻き込むことがあります |
| 解約の手続きとは別 | 物理的に外しても契約は続きます。料金は発生し続けます |
室内の機器(ONU・ルーター)を外すことと、建物側の設備を撤去することは、まったく別の作業です。
入居者ができるのは、室内の貸与機器を外して返却の準備をすることまでです。その先は事業者の作業になります。
撤去が退去日に間に合わないとき
実際によく起きます。退去日が決まってから動くと、工事の枠が取れません。
間に合わないと分かったときの動き方
まず管理会社に伝える
残置でよいか、あらためて確認する
退去後の作業が可能か聞く
費用の負担がどうなるか確認する
繁忙期(1〜4月)は枠がとくに埋まります。退去日が決まった週のうちに、管理会社と事業者の両方に連絡してください。
よくある失敗
事業者に「撤去は必要ですか」と聞く
事業者は建物の方針を知りません。管理会社が起点です。
退去の直前に動く
工事の枠が取れず、退去日に間に合いません。
残置してよいと自己判断する
後から撤去費用を請求されることがあります。書面で確認してください。
機器を返却し忘れる
貸与品です。設備を残すことと機器を返すことは別です。
解約手続きを忘れる
退去しても契約は続きます。料金が発生し続けます。
よくある疑問
撤去工事の費用はいくらですか。
自分で撤去してもよいですか。
撤去しないまま退去してしまいました。
次の入居者が使えるなら、残したほうがよいのでは。
退去時に「撤去費用」を請求されました。納得できません。
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一次情報の確認先
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