穴を開けずに引ける場合がある
「光回線=壁に穴を開ける」と思われていますが、実際にはすでにある開口部を使えることが多いです。開けるかどうかを決めるのは建物の状況で、事業者ではありません。まず自分の部屋を見てください。
引き込みに使える経路
屋外から室内にケーブルを入れる経路は、次の順で検討されるのが一般的です。上にあるものほど、新しく穴を開けずに済みます。
引き込み経路の候補
| 経路 | どんな部屋にあるか | 備考 |
|---|---|---|
| 既存の電話線の配管 | 電話の配線が来ている部屋 | 配管を通せれば新しい開口は不要。ただし配管が詰まっている・曲がりが急だと通らない |
| エアコンのダクト(配管穴) | エアコンが設置されている、または設置用の穴がある部屋 | 既存の穴なので新設にならない。隙間の処理が必要 |
| 換気口・通気口 | 建物による | 使えるかは現地の状況次第 |
| サッシの隙間 | 多くの部屋 | 薄いケーブルを窓枠から通す。窓の閉まり具合や気密に影響することがある |
| 新規の穴あけ | 上のどれも使えない場合 | 賃貸では原則、許可が必要 |
どれが使えるかは現地調査で決まります。事前に電話で確定させることはできません。
エアコンダクトが使えるかどうかは、エアコンの配管と一緒に通せる隙間があるかで決まります。部屋の壁を見て、エアコンの配管が壁を貫通している箇所にパテで埋めた跡があれば、そこが候補です。
ビス止めをどうするか
穴あけとは別に、ケーブルを固定するためのビス止めがあります。これも壁や外壁に穴を開ける作業です。
ビス止めを避けるために確認すること
- 配線モール(両面テープで貼る樹脂のカバー)で代替できるか
- 屋外部分は、既存の配管や雨どいに沿わせて固定できるか
- 室内の固定は、ステープル(釘)ではなく粘着式の留め具にできるか
- 固定しない箇所が長くなると、ケーブルがたるんで断線しやすくなる点をどう扱うか
「ビス止めなしでお願いします」と最初に伝えてください。作業が始まってからでは変更できません。ビス止めをしない場合、施工方法によっては仕上がりが変わることがあります。
申し込み前に、住所と建物で工事の可否を確認する
実際の引き込み経路と工事内容は、現地調査で決まります。事前の照会はあくまで見込みです。
- 料金・工事費・提供エリアは各社公式サイトの最新情報をご確認ください
- 工事の可否は建物の設備状況により異なります
- 契約前に管理会社・所有者の許可をご確認ください
業者に確認する言い方
工事の当日に慌てないよう、申し込みの段階で伝えておきます。
伝える順番
- ① 賃貸であることを伝える戸建てと集合住宅では工法が変わります。
- ② 許可の条件を伝える「穴あけ不可」「ビス止め不可」「共用部の作業は不可」など、管理会社から言われた条件をそのまま伝えます。
- ③ 使えそうな経路を伝える「エアコンダクトがあります」「電話線の配管が来ています」。現地調査が短くなります。
- ④ 条件を満たせない場合どうなるか聞く工事が中止になるのか、日程を変えるのか、費用が発生するのかを先に確認します。
④は必ず聞いてください。現地で「この条件では工事できません」となったときの扱いは、事業者ごとに違います。
工事では実際に何をするのか
「工事」と一語で言われますが、作業は3つに分かれます。どこまでが必要かで、時間も許可の重さも変わります。
工事の3つの部分
| 部分 | 何をするか | 許可との関係 |
|---|---|---|
| 屋外の作業 | 電柱から建物へ、または建物の引き込み口からケーブルを引く | 共用部・外壁に触るため、建物側の許可が要る |
| 室内への引き込み | 壁を通してケーブルを室内に入れる | 既存の開口部を使えば軽い。新規の穴あけなら許可が要る |
| 室内の作業 | 光コンセントの設置、機器の接続、動作確認 | 室内で完結するため、比較的軽い |
室内の作業だけで済む物件(光コンセントがある場合)と、屋外から始まる物件では、必要な許可がまったく違います。
管理会社に許可を求めるときは、この3つのどこまでが必要かを事業者に確認してから伝えると、話が具体的になります。「室内の作業だけです」と言えるなら、許可はずっと取りやすくなります。
賃貸で気をつけること
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)は、原状回復について次のように定めています。
賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること
国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)
ガイドラインは、経年変化と通常の使用による損耗は賃借人の負担ではないとしています。ただし、入居者が自分の意思で新しく開けた穴は「通常の使用による損耗」にはあたらないと判断されるのが通常です。だから許可を取るのです。
また、ガイドラインは特約が有効と認められるための要件として、次の3つを挙げています。
特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること/賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること/賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること
国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)
契約書に回線工事や原状回復についての特約がある場合は、入居時に読んで、認識したうえで合意しているかが問われます。今からでも読み返してください。
どうしても開けられないとき
穴あけもビス止めも一切不可、既存の経路も使えない——という物件はあります。その場合、光回線は物理的に引けません。
選択肢は工事不要の回線です。コンセントに挿すだけで使え、建物には一切触りません。そもそも許可の対象になりません。光回線との違いと、選ぶときの判断は工事ができないときのページにまとめました。
工事も穴あけも不要な回線の、提供状況を確認する
電波の入り方は住所・建物・階数・向きで変わります。速度は環境により異なります。
- 提供エリア・通信速度は各社公式サイトの公表値です
- 電波状況は住所や建物により異なります
- 契約内容は公式サイトでご確認ください
よくある疑問
穴あけは絶対に必要ですか。
エアコンダクトを使うと、隙間から虫や雨が入りませんか。
サッシの隙間から通す方法は、どんな欠点がありますか。
穴を開けた場合、退去時にどうなりますか。
すでに前の入居者が開けた穴があります。使えますか。
工事の当日に「穴あけが必要」と言われました。断れますか。
賃貸の回線工事と手続きガイドの記事一覧
一次情報の確認先
本ページの前提となる制度・統計は、以下の公的機関等の公表情報で確認できます。最新の内容は必ず各機関の公式ページでご確認ください。