「引いていいですか」と聞くと断られやすい
管理会社にとって、判断できない質問はいちばん困る質問です。「光回線を引いていいですか」は、工事の内容が分からないので即答できません。分からないものは、断るのが安全側の対応になります。聞き方を変えるだけで結果が変わります。
許可を出せるのは誰か
最終的に許可を出せるのは建物の所有者です。ただし窓口は違います。
窓口と、その人が決められる範囲
| 窓口 | 決められること | 決められないこと |
|---|---|---|
| 管理会社 | 所有者から委任された範囲の可否。多くは室内工事の可否まで | 委任の範囲を超える工事(外壁への穴あけなど)は所有者に確認が要る |
| 大家(所有者) | すべて | 分譲マンションでは、共用部については管理組合の管轄 |
| 管理組合 | 共用部(外壁・パイプスペース・MDF室)の使用可否 | 室内の工事は所有者・入居者の話 |
| 工事業者 | 技術的にどうやるか | 許可の可否は判断できない。業者が「大丈夫です」と言っても許可にはならない |
「業者が大丈夫と言った」は許可ではありません。ここを取り違えると、当日に作業が止まります。
何をどう聞くか
可否ではなく、条件を聞きます。相手が判断しやすい形にするのが目的です。
管理会社への聞き方
- ① 名乗って、部屋を特定する物件名・部屋番号・契約者名。これがないと調べようがありません。
- ② 目的を言う「インターネット回線を利用したい」。事業者名から入ると、話が広告の話になります。
- ③ 建物の現状を聞く「この建物に光回線は導入されていますか」「室内に光コンセントはありますか」。導入済みなら工事が要らないこともあります。
- ④ 可否ではなく条件を聞く「どのような工事であれば可能でしょうか」。穴あけ不可・ビス止め不可・共用部の作業不可、という条件が返ってきます。
- ⑤ 退去時の扱いを同時に聞く「退去のときは撤去が必要でしょうか、残置でよろしいでしょうか」。ここを後回しにすると退去時に揉めます。
- ⑥ 書面かメールで残す電話で聞いた内容を、メールで「以下の理解で相違ないでしょうか」と送って返信をもらいます。
④が要点です。「可か不可か」で聞くと不可になりやすく、「どの条件なら可か」で聞くと条件が返ってきます。返ってきた条件を工事業者に伝えれば、その範囲で工事が組めます。
記録の残し方
口頭の許可は、担当者が変わると消えます。退去は数年後です。
残しておくもの
- 許可を出した会社名・担当者名・日付
- 許可された工事の内容(穴あけの可否、ビス止めの可否、共用部の作業の可否)
- 退去時の扱い(撤去するのか、残置してよいのか)
- 撤去が必要な場合、費用を誰が負担するのか
メールで送って返信をもらう形なら、それだけで足ります。特別な書式は必要ありません。
建物名と住所で、工事の要否と提供状況を確認する
提供可否と工事内容は事業者の判定によります。許可の確認は契約前に行ってください。
- 料金・工事費・提供エリアは各社公式サイトの最新情報をご確認ください
- 工事の可否は建物の設備状況により異なります
- 契約前に管理会社・所有者の許可をご確認ください
断られたときに確認すること
断られた理由によって、次の手が変わります。理由を聞かずに引き下がらないでください。
断られた理由別の、次の一手
「建物に設備がないので不可」
「穴あけ・ビス止めは不可」
「他の入居者の前例がない」
「共用部の作業は管理組合の承認が要る」
理由を言わずに不可
分譲を借りている場合
分譲マンションの一室を借りている場合、許可が二段階になります。
①貸主(区分所有者)の許可:室内の工事について。
②管理組合の承認:共用部(外壁・パイプスペース・MDF室・配線ラック)に触る工事について。
管理組合は理事会や総会で決めることがあるため、返答まで1か月以上かかることがあります。引っ越しの日程から逆算すると間に合わないことが多く、入居直後は工事不要の回線でつなぎ、承認が下りてから光回線に移るという順序が現実的です。
図面や現地調査を求められたとき
管理会社から「工事の図面を出してください」「現地を見せてください」と言われることがあります。これは断られたのではなく、判断するための材料を求められている状態です。
求められるものと、誰が用意するか
| 求められるもの | 誰が用意するか | 入居者がすること |
|---|---|---|
| 工事の内容がわかる資料 | 回線事業者・工事業者 | 事業者に「管理会社に提出する資料が要る」と伝えて取り寄せる |
| 建物の図面 | 管理会社・所有者が持っている | 入居者が用意するものではない。事業者に渡してよいか確認する |
| 現地調査の立会い | 工事業者 | 調査の日程を管理会社と工事業者の間で合わせる |
| 書面での申請 | 入居者 | 管理会社の書式があるか先に確認する |
「図面を出せ」と言われて止まってしまう人が多いのですが、建物の図面は建物側が持っています。まず何の図面かを聞いてください。
現地調査は、工事が可能かどうかを技術的に確かめる作業です。調査だけなら建物に手を加えません。管理会社に「まず現地を見てもらうだけでもよいでしょうか」と聞くと、話が前に進むことがあります。
管理会社が反対する典型的な理由
反対の背景が分かると、対応が変わります。管理会社が心配しているのは、ほとんどの場合「建物が元に戻らないこと」と「次の入居者に影響が出ること」の2つです。回線が引かれること自体を嫌っているわけではありません。
ですから、その2つが起きないと示せれば通ります。逆に「どうしても使いたいので」と必要性だけを訴えても、相手の心配は解消しないため動きません。以下は、実際に返ってくることの多い理由と、それぞれに対してこちらができることです。
反対の背景と、こちらができること
外観が変わることを嫌っている
次の入居者のために原状に戻したい
過去にトラブルがあった
建物として一括で契約している
判断できる人が不在
よくある失敗
工事日を先に決めてしまう
管理会社の確認に日数がかかると、当日に作業できません。工事日の変更やキャンセルには事業者ごとの規定があります。
業者の「大丈夫です」を許可と受け取る
工事業者は技術的な可否しか判断できません。建物への許可は建物側が出すものです。
口頭で済ませる
退去は数年後で、担当者は変わります。メール1通で残せます。
退去時の扱いを聞かない
退去のときに「撤去してください」と言われ、費用の話になります。入居中に聞けば数十秒です。
「引いていいですか」と可否で聞く
判断材料がない質問は、断るのが安全側の対応になります。条件を聞いてください。
よくある疑問
許可なく工事してしまいました。どうすればよいですか。
管理会社に電話がつながりません。
許可が下りるまで、どのくらいかかりますか。
大家さんが個人で、高齢のため話が進みません。
退去時に撤去を求められたら、費用は誰が払いますか。
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