空き家の解体費の補助は、国ではなく市区町村が決めている
「空き家の解体に補助金が出る」という話は本当ですが、全国一律の制度ではありません。国の予算は市区町村を通してしか流れず、実際に出すかどうか・いくら出すか・誰を対象にするかは、市区町村ごとの交付要綱で決まっています。だから隣の市では出て、自分の市では出ない、ということが普通に起きます。
制度の構造
空き家の解体に関わる制度は、4つの層に分かれています。どの層を見ているかを間違えると、話が噛み合いません。
だれが何を決めているか
| 層 | 決めていること | 出どころ |
|---|---|---|
| 国(空家法) | 特定空家等・管理不全空家等という枠組み、市区町村の権限 | 空家等対策の推進に関する特別措置法 |
| 国(補助事業) | 市区町村に対して国費を出す条件 | 空き家対策総合支援事業 |
| 市区町村(要綱) | 補助金があるか、いくらか、誰が対象か、いつまでか | 各市区町村の交付要綱 |
| 市区町村(税) | 住宅用地特例を外すかどうか(勧告後) | 地方税法・空家法 |
出典:国土交通省の公表資料および各市区町村の要綱から整理。実際に自分の家に補助が出るかどうかを決めているのは、いちばん下の要綱です。
「解体費用の相場」を調べても補助金のことは分かりません。相場を決めているのは工事会社で、補助を決めているのは市区町村だからです。
国の事業は市区町村を通す
国土交通省の「空き家対策総合支援事業」は、市区町村に対して国費を出す仕組みです。所有者が直接申し込む窓口はありません。
空き家対策総合支援事業の負担割合(国土交通省の公表資料)
| だれが実施するか | 除却の負担割合 |
|---|---|
| 所有者が実施する場合 | 国1/2、市区町村1/2 |
| 市区町村が実施する場合 | 国2/5、市区町村3/5 |
| モデル的な取組 | 除却 2/5 |
出典:国土交通省「空き家対策総合支援事業(令和8年度概要資料)」。基本要件として「空家法の空家等対策計画に基づき市区町村が実施する」ことが示されています。
ここが要点です。国費が入るには、その市区町村が「空家等対策計画」を作っていることが前提になります。計画が無ければ、この事業の枠は使えません。
要綱を見に行くと何が分かるか
市区町村の補助金は、ほぼ必ず「〇〇市老朽危険空家除却補助金交付要綱」のような名前の文書で決まっています。ホームページの案内ページより、要綱そのもののほうが情報量が多いことがあります。
要綱に書いてあること
- 補助対象となる空家等の定義(築年・空き家の期間・構造・用途)
- 老朽度の判定方法(評点・不良度の測定基準)
- 補助対象者(所有者本人か、相続人か、法人は除くか)
- 補助対象経費と、対象外の経費
- 補助率と限度額
- 申請の期限(年度の途中で締め切られることがある)
- 交付決定の前後で何をしてよいか
要綱は「例規集」「地域の条例・規則」といったページに置かれていることが多いです。市区町村名+「空家 除却 補助金 交付要綱」で探すと出てきます。
計画がある市区町村は88%
国土交通省が公表している施行状況では、空家等対策計画の策定状況はこうなっています。
空家法の施行状況(令和7年3月31日時点・国土交通省)
| 項目 | 件数 |
|---|---|
| 空家等対策計画 策定済み | 1,541(88%) |
| 管理不全空家等への勧告 | 378件 |
| 特定空家等への助言・指導 | 4,026件 |
| 特定空家等への勧告 | 600件 |
| 特定空家等への命令 | 101件 |
| 行政代執行/略式代執行/緊急代執行 | 71件/81件/9件 |
| 除却・修繕等の措置(累計・合計) | 220,030件 |
出典:国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況等(令和7年3月31日時点)」。累計220,030件のうち189,029件は「その他市区町村の取組による除却・修繕等」です。
数字の読み方はこうです。代執行(役所が強制的に壊す)は年に百数十件しかありません。ほとんどは、所有者が自分で片をつけています。補助金はその後押しとして置かれているものです。
自分の空き家がどこに当たるか
親から相続したが、まだ誰も住んでいない
建物が傷んでいて、危ないと言われた
すでに市から「特定空家」の勧告が来ている
もう解体業者と契約してしまった
家の中に家財が残っている
確認の順序
最初にやること
- 空き家がある市区町村を確認する自分が住んでいる市区町村ではありません。空き家の所在地の市区町村です。
- 「空家等対策計画」があるか見る計画があれば、国費が入る枠を使っている可能性があります。
- 補助金のページと要綱を両方見る案内ページに書いていない条件が要綱にあります。
- 受付期間と予算枠を確認する相模原市は「予算に達し次第、受付を終了します」と明記しています。
- 契約より先に窓口へ行くここを逆にすると対象外になります。→ 契約より先に申請する
- 家財をどうするか決める補助の対象外になりやすい部分です。→ 家財の処分費は対象外
先に決まるのは家財のこと
補助金の申請より前に動き出せることがあります。家の中に残っているものの整理です。多くの要綱で家財の処分費は補助の対象外なので、ここは自分で段取りする部分になります。解体の見積もりも、中身が空いているかどうかで変わります。
解体の見積もりを取る前に、中のものを片付ける
家財が残ったままだと、解体の見積もりに「残置物処分」が乗ります。先に片付けておくと、工事の範囲がはっきりします。
- k
- u
- r
- a
- s
- h
- i
→ 補助金は市区町村の要綱で決まる/対象になる空き家の条件/契約より先に申請する/家財の処分費は対象外/共有と相続の同意/解体した後の土地の税/取り壊した後の届出
確認に使った一次情報
- 国土交通省「空き家対策総合支援事業(令和8年度概要資料)」https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/002019827.pdf
- 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況等(令和7年3月31日時点)」https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001984996.pdf
- 国土交通省「空家の除却等を促進するための土地に係る固定資産税等に関する措置」https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/002019834.pdf
- 相模原市「危険な老朽空き家等除却費補助金について(空き家解体費補助)」相模原市 危険な老朽空き家等除却費補助金
- 松江市「松江市老朽危険空き家除却支援事業補助金について」松江市 老朽危険空き家除却支援事業補助金
- 千葉市「年の途中で家屋を取り壊した又は建て替えた場合はどうしたらよいでしょうか。」千葉市 よくある質問
- 東京都主税局「固定資産税・都市計画税(土地・家屋)」https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/real_estate/kotei_tosi
よくある疑問
空き家の解体費の補助金は、どの市区町村にもありますか。
国に直接申し込むことはできますか。
補助金はいくらもらえますか。
年度の途中でも申し込めますか。
解体業者に聞けば分かりますか。
空き家を解体すると土地の税金は上がりますか。
空き家の除却補助金ガイドの記事一覧
一次情報の確認先
本ページの前提となる制度・統計は、以下の公的機関等の公表情報で確認できます。最新の内容は必ず各機関の公式ページでご確認ください。