順番を逆にすると、もらえるはずのものが消える
空き家の除却補助金でいちばん多い取りこぼしは、条件を満たしていないことではありません。先に業者と契約してしまうことです。相模原市は「補助金の交付決定する前に、契約を既に締結している場合」を対象外としています。松江市は「工事着工前に申請し、補助金の交付が決定してから着手してください」と書いています。
なぜ順番が決まっているのか
補助金は「その補助が無ければ実行されなかった事業」に出すものだからです。すでに契約が済んでいるということは、補助が無くてもやるつもりだった、と扱われます。これは空き家の補助金に限らず、自治体の補助金に広くある考え方です。
だから要綱には、たいてい「交付決定前に着手した事業は補助対象としない」という趣旨の条文が置かれています。
2市の記載
交付決定と契約・着工の順序(実際に確認できた記載)
| 市 | 記載 |
|---|---|
| 相模原市 | 「補助金の交付決定する前に、契約を既に締結している場合」は対象外 |
| 松江市 | 「工事着工前に申請し、補助金の交付が決定してから着手してください」 |
出典:相模原市・松江市の公表内容(2026年9月10日確認)。文言は市区町村ごとに違いますが、順序を守るという点は共通しています。
相模原市は「契約」、松江市は「着手」と書いています。厳しいほうに合わせて、契約書に印を押す前に窓口へ行くのが安全です。
手続きの流れ
相模原市は、交付申請の前に「事前調査申込」という段階を置いています。ここで老朽度の判定を受けてから、交付申請に進みます。
相模原市の場合の流れ(公表内容から)
- 事前調査申込除却工事を実施する年度の10月末日までに。登記事項証明書・図面・工事前の写真・見積書・確認済証写しなど。
- 事前調査結果通知書を受け取る老朽度の判定結果。ここで対象かどうかが分かります。
- 交付申請11月末日までに。事前調査結果通知書・住民票・市税未納証明書など。
- 交付決定ここまで契約してはいけません。
- 契約・着工交付決定の後。
- 工事完了交付決定日の属する年度の1月末日までに。
- 実績報告契約書・領収書・費用内訳書・建物取毀証明書または滅失登記写し・工事中と完了後の写真。
- 補助金の支払い原則は後払いです。いったん全額を自分で払う必要があります。
ここも見落とされがちです。補助金は工事が終わってから支払われます。解体費用は先に用意しておく必要があります。
年度の締切
相模原市は「予算に達し次第、受付を終了します」と書いています。条件を満たしていても、枠が埋まれば終わります。
相模原市の日程(公表内容から)
| 段階 | 期限 |
|---|---|
| 事前調査申込 | 工事を実施する年度の10月末日まで |
| 交付申請 | 同じ年度の11月末日まで |
| 工事完了 | 交付決定日の属する年度の1月末日まで |
| 受付の終了 | 予算に達し次第 |
出典:相模原市の公表内容。日程は市区町村ごと・年度ごとに異なります。松江市は「令和9年2月26日までに実績報告書を提出」できる者を対象としています。
逆算すると、年度の前半に動き出す必要があります。「今年度中に壊したい」と思った時点で、すでに遅いことがあります。
見積もりは取ってよい
混乱しやすいところですが、見積もりを取るのは契約ではありません。相模原市は事前調査申込の必要書類に「見積書・内訳書」を挙げています。つまり、申請の時点で見積もりが要ります。
交付決定の前にやってよいこと
- 複数の業者から見積もりを取る
- 図面・写真を用意する(日付入りの工事前写真を求められます)
- 登記事項証明書・確認済証を取る
- 家財を片付ける(補助対象外の部分なので、先に動けます)
- 市の窓口に相談する
- 工事の時期を業者と相談する(契約書に印は押さない)
迷いやすい場面
業者から「今契約すれば安くする」と言われた
口約束だけして、契約書はまだ交わしていない
急いで壊さないと危ない状態だと言われている
先に家財だけ片付けたい
年度をまたいで工事したい
よくある取りこぼし
交付決定前に契約してしまった
相模原市はこれを対象外としています。取り消しはできません。契約の前に必ず窓口へ。
補助金が先に振り込まれると思っていた
実績報告の後に支払われるのが原則です。解体費用は先に全額用意する必要があります。
工事前の写真を撮っていなかった
相模原市は「工事前の写真(日付入り)」を必要書類に挙げています。壊してからでは撮れません。
受付終了に間に合わなかった
「予算に達し次第、受付を終了します」と書かれている市区町村があります。年度の前半に動いてください。
実績報告の書類が揃わなかった
建物取毀証明書または滅失登記の写しが要ります。業者に取毀証明書を出してもらえるか、契約前に確認を。
確認の順序
順番を間違えないために
- 市の窓口に電話するいちばん先。今年度の受付状況と締切を聞く。
- 要綱を読む交付決定前の着手についてどう書いてあるか。
- 見積もりを取る契約はしない。申請書類として使う。
- 工事前の写真を撮る日付が分かるように。
- 事前調査・交付申請を出す書類の不足で戻されると締切に響きます。
- 交付決定を待つここまで契約しない。
- 契約・着工・完了・実績報告工事完了の期限も年度内です。
→ 補助金は市区町村の要綱で決まる/対象になる空き家の条件/契約より先に申請する/家財の処分費は対象外/共有と相続の同意/解体した後の土地の税/取り壊した後の届出
確認に使った一次情報
- 国土交通省「空き家対策総合支援事業(令和8年度概要資料)」https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/002019827.pdf
- 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況等(令和7年3月31日時点)」https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001984996.pdf
- 国土交通省「空家の除却等を促進するための土地に係る固定資産税等に関する措置」https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/002019834.pdf
- 相模原市「危険な老朽空き家等除却費補助金について(空き家解体費補助)」相模原市 危険な老朽空き家等除却費補助金
- 松江市「松江市老朽危険空き家除却支援事業補助金について」松江市 老朽危険空き家除却支援事業補助金
- 千葉市「年の途中で家屋を取り壊した又は建て替えた場合はどうしたらよいでしょうか。」千葉市 よくある質問
- 東京都主税局「固定資産税・都市計画税(土地・家屋)」https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/real_estate/kotei_tosi
よくある疑問
見積もりを取ることも「着手」になりますか。
交付決定はどのくらいで出ますか。
補助金はいつ振り込まれますか。
年度が変わってから工事してもいいですか。
契約を解除してやり直せば対象になりますか。
空き家の除却補助金ガイドの記事一覧
一次情報の確認先
本ページの前提となる制度・統計は、以下の公的機関等の公表情報で確認できます。最新の内容は必ず各機関の公式ページでご確認ください。