力を受け止めるのはいちばん下
耐震診断では、壁の量や接合部だけでなく「劣化の状況」も評価されます。木造住宅で劣化が進みやすいのは、床下です。土台や柱の根元が腐朽や蟻害で傷んでいると、上でどれだけ壁を増やしても、その力を受け止める部分が効きません。外から見ても分からないので、確認しないまま設計に進むと後で戻ります。
なぜ床下が効くのか
木造住宅は、地震の力を壁で受け止め、柱と土台を通して基礎に流します。この経路のどこかが切れていると、力は伝わりません。
力の流れと、切れやすいところ
| 経路 | 役割 | 切れる原因 |
|---|---|---|
| 耐力壁 | 地震の力を受け止める | 壁が少ない・配置が偏っている |
| 接合部(柱と梁) | 力を伝える | 金物が無い・古い仕様 |
| 柱と土台の接合 | 力を下へ流す | 柱の根元の腐朽・蟻害 |
| 土台 | 力を基礎に伝える | 腐朽・蟻害 |
| 基礎 | 地盤へ流す | ひび割れ・無筋 |
上の2つは図面で分かりますが、下の3つは見ないと分かりません。耐震診断では劣化の状況も評価の対象になります。
「壁を増やせば強くなる」というのは、下が効いていることが前提の話です。
診断でどう評価されるか
東京都耐震ポータルサイトは、一般診断法について「調査にあたっては原則、内装材や外装材を剥がしたりしません」と説明しています。つまり、壁の中は見ません。
一方で床下は点検口から入れることが多く、目視で確認できる部分です。診断の場でどこまで見るかは、診断する人と現場の条件によります。
上部構造評点(Iw)の区分と判定(東京都耐震ポータルサイト)
| 評点 | 判定 |
|---|---|
| 1.5以上 | 倒壊しない |
| 1.0以上〜1.5未満 | 一応倒壊しない |
| 0.7以上〜1.0未満 | 倒壊する可能性がある |
| 0.7未満 | 倒壊する可能性が高い |
出典:東京都耐震ポータルサイト「戸建住宅の耐震診断」。「必要な耐震性能を満たすには、Iwが1.0以上である必要があります」とされています。
劣化が進んでいると、評点は下がります。逆に言えば、劣化を直すことが評点を上げる一部になることがあります。補強設計の段階で、腐朽・蟻害への対応が入るかどうかを確認してください。→ 補強設計と補強工事
傷みが進みやすい条件
床下の傷みが進みやすい条件
- 床下の換気が悪い(通気口がふさがれている・基礎が閉じている)
- 敷地が湿っている(水はけが悪い・周りより低い)
- 水回りの下(浴室・洗面・台所・トイレ)
- 雨漏りがあった、または今もある
- 過去に浸水したことがある
- 基礎に土が接している・植栽が近い
- 長く空き家にしていた時期がある
水回りの下は、配管からの漏水がじわじわ続いていることがあります。床がふかつく、歩くと音がする、といった感覚は、床下からの信号です。
見ておきたい場所
床下・小屋裏で見られるもの
| 場所 | 見るもの |
|---|---|
| 土台 | 腐朽・蟻道・食害の跡・含水 |
| 柱の根元 | 変色・粉状の劣化・触ると崩れる |
| 大引・根太 | たわみ・腐朽 |
| 基礎 | ひび割れ・欠け・湿り |
| 床下の地面 | 湿り・水たまり・カビ臭 |
| 小屋裏 | 雨漏りの跡・シミ |
床下は点検口から入ります。点検口が無い、狭い、という家もあります。無理に自分で入ると危険なので、専門の調査を使う方法があります。
確認の順番
耐震診断の前に床下の状態が分かっていると、話が早く進みます。診断で「劣化の疑いあり」と言われてから調べ直すより、先に把握しておくほうが手戻りが少なくなります。
木造の床下で問題になるのは、湿気による腐朽とシロアリによる食害の2つです。どちらも、進んでいる範囲が外からは分かりません。床下に入って見る必要があります。
床下がどうなっているかを先に見ておく
土台や柱の根元の腐朽・蟻害は、外から見ても分かりません。現地調査で、どこがどれだけ傷んでいるかを確認できます。
- k
- u
- r
- a
- s
- h
- i
状況ごとの考え方
床がふかつく場所がある
過去にシロアリの駆除をしたことがある
浸水したことがある
床下点検口が無い
診断で劣化を指摘された
空き家にしている家
よくある取りこぼし
壁だけ補強した
土台や柱の根元が傷んでいると、力が伝わりません。
床下を見ないまま設計に進んだ
工事が始まってから見つかると、追加の費用と工期が発生します。
駆除だけで終わらせた
シロアリを駆除しても、食われた部材は元に戻りません。補修は別の作業です。
通気口をふさいでいた
物置や植栽で通気口がふさがれていることがあります。湿気がこもります。
水回りの漏れに気づいていなかった
配管からのじわじわした漏れは、床下でないと分かりません。
確認の順序
床下について確かめる
- 床のたわみ・音・においを確認する気になる場所を書き出す。
- 床下点検口の位置を確認する無い場合は調査のときに相談。
- 床下の状態を見てもらう腐朽と蟻害の両方。
- 耐震診断を受ける→ 耐震診断と上部構造評点
- 補強設計に劣化の対応を入れる→ 補強設計と補強工事
- 通気と水はけを整える再発を防ぐ部分。
→ 耐震の補助は要綱で決まる/2つの年で分かれる/耐震診断と上部構造評点/補強設計と補強工事/契約より先に申請する/床下の腐朽と蟻害/全部は直せないとき/改修後の固定資産税の減額
確認に使った一次情報
- 国土交通省「住宅・建築物の耐震化について」国土交通省 住宅・建築物の耐震化について
- 国土交通省 みんな安心住まいサポートセンター「<新耐震基準>を満たす住宅とはどういう意味ですか」https://renkei-sb.mlit.go.jp/
- 東京都耐震ポータルサイト「戸建住宅の耐震診断」東京都耐震ポータルサイト 戸建住宅の耐震診断
- 横須賀市「木造住宅の耐震診断・補強工事助成事業」横須賀市 木造住宅の耐震診断・補強工事助成事業
- 横浜市「木造住宅の無料耐震診断」横浜市 木造住宅の無料耐震診断
- 三鷹市「住宅の耐震改修に伴う固定資産税の減額制度」三鷹市 住宅の耐震改修に伴う固定資産税の減額制度
よくある疑問
床下の調査は耐震補助の対象になりますか。
シロアリの駆除費用は耐震補助で出ますか。
床下が湿っているだけでも問題ですか。
自分で床下に入って見てもいいですか。
新しい家でも床下は傷みますか。
木造住宅の耐震補助ガイドの記事一覧
一次情報の確認先
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