制度はある。登録しないと動かない
災害のとき、自力で避難できない人のための制度は4つあります。避難行動要支援者名簿、個別避難計画、指定福祉避難所、そして自治体ごとの給付や配布です。名簿の作成は市町村の義務、個別避難計画の作成は努力義務。ただし、名簿情報を近所の人や消防に渡すには、原則として本人の同意が要ります。放っておくと、誰も助けに来る手はずが整いません。
4つの制度
災害時に助けが要る人のための4つの制度
| 制度 | 何をするものか | 根拠・出どころ |
|---|---|---|
| 避難行動要支援者名簿 | 自力で避難できない人を市町村が名簿にする | 災害対策基本法(平成25年改正で市町村の義務) |
| 個別避難計画 | その人ごとに、誰がどう支援して、どこへ逃げるかを決める | 災害対策基本法(令和3年改正で市町村の努力義務) |
| 指定福祉避難所 | 要配慮者の受け入れを想定した避難所。直接避難できる仕組み | 内閣府「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」(令和3年5月改定) |
| 自治体独自の給付・配布 | 非常用電源の給付、救急医療情報キットの配布など | 各市区町村の要綱 |
出典:内閣府および各市区町村の公表内容から整理。上2つは全国共通の枠組み、下2つは市区町村ごとに中身が違います。
法律で決まっていること
内閣府は、災害対策基本法の改正についてこう説明しています。
災害時に自ら避難することが困難な高齢者や障害者等の避難行動要支援者について、避難行動要支援者名簿を作成することが市町村の義務とされました。
出典:内閣府(平成25年改正について)
避難行動要支援者について、個別避難計画を作成することが市町村の努力義務とされました。
出典:内閣府(令和3年改正について)
名簿は「義務」、計画は「努力義務」。ここに温度差があります。計画のほうは、市町村が全員分を一度に作れるわけではありません。内閣府の取組指針は「おおむね5年程度で優先度が高い方の計画作成を完了」としています。つまり順番待ちがあります。
誰が対象になるか
内閣府の取組指針は、要件の例としてこう挙げています。
避難行動要支援者の要件例(内閣府の取組指針)
| 区分 | 例として挙げられているもの |
|---|---|
| 介護 | 要介護認定3〜5を受けている者 |
| 身体障害 | 身体障害者手帳1・2級の第1種 |
| 知的障害 | 重度以上と判定された知的障害者 |
| 精神障害 | 精神障害者保健福祉手帳1・2級で単身世帯 |
| 子ども | 医療的ケア児/保護者のみでは避難行動が困難である障害児 |
出典:内閣府「避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針」(令和3年5月改定)。これは要件の「例」です。実際の要件は市町村が定めます。手帳や認定が無くても、申し出により登録できる市区町村があります。
「うちの親は要介護2だから対象外だ」と自分で決めないでください。市区町村によっては、本人からの申し出で登録できる仕組みを置いています。
動く順番
何から始めるか
- 市区町村の窓口に電話する防災担当課か福祉担当課。名簿の制度があるかを聞く。
- 名簿に登録する同意の有無で扱いが変わります。→ 避難行動要支援者名簿
- 個別避難計画の作成を相談するケアマネジャーや相談支援専門員が関わることがあります。→ 個別避難計画
- 避難先を確認する一般の避難所か、福祉避難所か。→ 福祉避難所と直接避難
- 電源が要るなら給付を確認する→ 電源が要るときの給付
- 救急医療情報キットをもらう→ 救急医療情報キット
- 家の中の退路を確保する→ 家族が先にやること
状況ごとの入口
親が要介護で、一人で住んでいる
障害があって、避難所での生活が難しい
在宅で電源が必要な機器を使っている
名簿に載せると近所に知られるのが心配
離れて暮らしていて、何をすればいいか分からない
すでに登録しているが、計画は無い
よくある取りこぼし
名簿に載れば自動で助けが来ると思っていた
名簿は「誰が支援を要するか」の一覧です。誰がどう助けるかは個別避難計画で決めます。
同意していなかったので情報が渡っていなかった
災対法は平常時の名簿情報の提供に本人の同意を求めています(条例に特別の定めがある場合を除く)。
要介護度が低いから対象外だと決めつけた
要件は市町村が定めます。申し出で登録できる市区町村があります。
福祉避難所に直接行けると思い込んでいた
事前の調整が前提です。受入対象者は事前に特定されます。
窓口が1つだと思っていた
防災・福祉・保健所で分かれています。
窓口が分かれている
だいたいの窓口
| 制度 | 窓口の例 |
|---|---|
| 避難行動要支援者名簿 | 防災担当課・福祉担当課(市区町村で違う) |
| 個別避難計画 | 同上+ケアマネジャー・相談支援専門員 |
| 指定福祉避難所 | 防災担当課・福祉担当課 |
| 非常用電源の給付 | 保健所・健康福祉センター(江戸川区・板橋区の例) |
| 救急医療情報キット | 高齢福祉担当課・社会福祉協議会・薬局(市区町村で違う) |
同じ市区町村でも担当が分かれています。総合案内で「災害のときに支援が必要な人の登録」と伝えると案内してもらえます。
→ 4つの制度の全体像/避難行動要支援者名簿/個別避難計画/福祉避難所と直接避難/電源が要るときの給付/救急医療情報キット/家族が先にやること
確認に使った一次情報
- 内閣府(防災担当)「避難行動要支援者の避難行動支援に関すること」内閣府 避難行動要支援者の避難行動支援
- 内閣府「避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針」(令和3年5月改定)取組指針(PDF)
- 内閣府「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」(令和3年5月改定)福祉避難所の確保・運営ガイドライン(PDF)
- 江戸川区「在宅人工呼吸器使用者自家発電装置等給付事業」江戸川区 在宅人工呼吸器使用者自家発電装置等給付事業
- 板橋区「在宅人工呼吸器使用者非常用電源装置給付事業」板橋区 在宅人工呼吸器使用者非常用電源装置給付事業
- 墨田区「救急医療情報キットを配布しています」墨田区 救急医療情報キット
よくある疑問
名簿への登録は無料ですか。
手帳や介護認定が無いと登録できませんか。
登録すると必ず助けに来てもらえますか。
賃貸に住んでいても登録できますか。
親の代わりに家族が登録できますか。
災害時に助けが要る人の制度ガイドの記事一覧
一次情報の確認先
本ページの前提となる制度・統計は、以下の公的機関等の公表情報で確認できます。最新の内容は必ず各機関の公式ページでご確認ください。