「あとから移る」から「最初からそこへ」へ
福祉避難所は、これまで「まず一般の避難所へ行き、必要と判断された人があとから移る」という運用が中心でした。令和3年5月の内閣府ガイドライン改定で、この考え方が変わりました。内閣府は「避難が必要となった際に福祉避難所等への直接の避難を促進することが適当である」としています。ただし、直接避難するには事前の調整が要ります。
一般の避難所との違い
内閣府のガイドラインによれば、指定一般避難所は災害対策基本法施行令第20条の6の第1号から第4号に適合すれば足りますが、指定福祉避難所はさらに第5号の要件が必須です。
要配慮者の円滑な利用の確保、要配慮者が相談し、又は助言その他の支援を受けることができる体制の整備
出典:内閣府「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」(令和3年5月改定)
2つの避難所
| 指定一般避難所 | 指定福祉避難所 | |
|---|---|---|
| 根拠 | 災害対策基本法施行令第20条の6 第1号〜第4号 | 左に加えて第5号(要配慮者の利用確保・支援体制) |
| 施設の例 | 小中学校・公民館など | 特別養護老人ホーム・障害者支援施設・特別支援学校など |
| 受け入れる人 | 地域の住民 | 受入対象者を特定して公示できる |
| 行き方 | その場で行ける | 事前の調整が前提 |
出典:内閣府「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」(令和3年5月改定)から整理。どの施設が指定されているかは市区町村が公示します。
指定と公示
令和3年の改正で、公示の内容が変わりました。
市町村長は、指定福祉避難所を指定したときは、その名称、所在地及び当該指定福祉避難所に受け入れる被災者等を特定する場合にはその旨」を公示する
出典:内閣府「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」(令和3年5月改定)
「受け入れる被災者等を特定する場合にはその旨」を公示できるようになった、というのが要点です。これによって「ここは高齢者施設だから、一般の人が押し寄せる場所ではない」ということを、事前に明示できます。施設側が受け入れをためらう理由が減り、指定が進むという設計です。
受入対象者は事前に特定される
指定福祉避難所の受入対象者は、当該指定福祉避難所の通常業務におけるサービス対象者や平素から利用している者
出典:内閣府「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」(令和3年5月改定)
そして市町村は「地区防災計画や個別避難計画等の作成プロセスを通じて、事前に指定福祉避難所ごとに受入対象者の調整等を行う」とされています。
つまり、直接避難できるかどうかは、個別避難計画づくりの中で決まります。→ 個別避難計画
直接避難という考え方
内閣府はガイドラインで、当事者の声をこう紹介しています。
障害者等については……平素から利用し、その環境に慣れている施設へ直接に避難したいとの声
出典:内閣府「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」(令和3年5月改定)
これまでと、これから
| 従来の運用 | 令和3年改定後の方向 | |
|---|---|---|
| 最初に行く場所 | 一般の避難所 | 平素から利用している施設へ直接 |
| 移動の回数 | 2回(一般→福祉) | 1回 |
| 本人の負担 | 大きい(環境の変化を2度受ける) | 小さい |
| 前提 | 現地での判断 | 事前の調整と公示 |
出典:内閣府のガイドラインから整理。直接避難が実際にできるかどうかは市区町村と施設の調整によります。
「環境に慣れている施設へ」というのが、この改定の芯です。認知症のある人や、感覚の過敏がある人にとって、慣れない場所への移動そのものが大きな負担になります。
たどり着くために準備すること
窓口や施設で確認すること
- 市区町村が指定福祉避難所を公示しているか(名称・所在地)
- 受入対象者が特定されているか
- 自分(家族)が直接避難できる対象か
- 通っている施設が指定されているか(デイサービス・作業所など)
- 直接避難する場合の連絡の仕方(いつ、誰に)
- 移動の手段(誰の車で、どの経路で)
- 個別避難計画に書き込めるか
いちばん確実なのは、いま通っている施設が指定を受けているかを聞くことです。「平素から利用している者」が受入対象者の考え方の中心にあります。
状況ごとの考え方
通っているデイサービスが指定されていた
どこが指定福祉避難所か分からない
福祉避難所が遠い
一般の避難所しかない地域
家にいたほうが安全な場合
家族が付き添えるか分からない
よくある取りこぼし
当日に行けば入れると思っていた
受入対象者は事前に特定されます。調整していないと入れないことがあります。
公示を見ていなかった
市町村長が名称・所在地を公示します。
通っている施設に聞いていなかった
「平素から利用している者」が受入対象者の考え方の中心です。
移動の手段を決めていなかった
自力で行けないから福祉避難所が必要なのに、行く手段が無い、という事態が起きます。
個別避難計画と別々に考えていた
調整は個別避難計画の作成プロセスを通じて行われます。
確認の順序
避難先を決める
→ 4つの制度の全体像/避難行動要支援者名簿/個別避難計画/福祉避難所と直接避難/電源が要るときの給付/救急医療情報キット/家族が先にやること
確認に使った一次情報
- 内閣府(防災担当)「避難行動要支援者の避難行動支援に関すること」内閣府 避難行動要支援者の避難行動支援
- 内閣府「避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針」(令和3年5月改定)取組指針(PDF)
- 内閣府「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」(令和3年5月改定)福祉避難所の確保・運営ガイドライン(PDF)
- 江戸川区「在宅人工呼吸器使用者自家発電装置等給付事業」江戸川区 在宅人工呼吸器使用者自家発電装置等給付事業
- 板橋区「在宅人工呼吸器使用者非常用電源装置給付事業」板橋区 在宅人工呼吸器使用者非常用電源装置給付事業
- 墨田区「救急医療情報キットを配布しています」墨田区 救急医療情報キット
よくある疑問
福祉避難所には誰でも行けますか。
直接避難は全国どこでもできますか。
福祉避難所の場所は公開されていますか。
家族も一緒に入れますか。
一般の避難所に行ってから移ることはできますか。
災害時に助けが要る人の制度ガイドの記事一覧
一次情報の確認先
本ページの前提となる制度・統計は、以下の公的機関等の公表情報で確認できます。最新の内容は必ず各機関の公式ページでご確認ください。