名簿はある。渡すには同意が要る
避難行動要支援者名簿の作成は、災害対策基本法で市町村の義務です。つまり、あなたが何もしなくても名簿そのものは作られている可能性があります。問題はその先で、平常時にその情報を消防・警察・民生委員・自治会などへ渡すには、原則として本人の同意が必要です。同意していなければ、いざというときに近所の人はあなたの家を知りません。
作成は市町村の義務
内閣府は、平成25年の災害対策基本法改正についてこう書いています。
災害時に自ら避難することが困難な高齢者や障害者等の避難行動要支援者について、避難行動要支援者名簿を作成することが市町村の義務とされました。
出典:内閣府「避難行動要支援者の避難行動支援に関すること」
背景は東日本大震災です。内閣府は「障害者、高齢者、外国人、妊産婦等の方々について、情報提供や避難生活での対応が不十分だった」ことを挙げています。
同意が要るのはどこか
ここが制度のいちばん大事なところです。内閣府の取組指針は、災対法第49条の11第2項についてこう整理しています。
条例に特別の定めがある場合を除き……本人の同意が得られない場合は、この限りではない
出典:内閣府「避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針」(令和3年5月改定)
同意の有無で何が変わるか
| 場面 | 同意あり | 同意なし |
|---|---|---|
| 市町村が名簿を作る | 作られる | 作られる(義務) |
| 平常時に消防・民生委員・自治会へ渡す | 渡される | 原則として渡されない |
| 災害が発生し、または発生するおそれがある場合 | 渡される | 本人の同意がなくても提供できる(災対法の定め) |
| 個別避難計画の作成 | 進めやすい | 関係者と共有できず進みにくい |
出典:内閣府の取組指針および災害対策基本法の規定から整理。条例に特別の定めを置いて、同意がなくても提供できるようにしている市区町村があります。運用は市区町村ごとに確認してください。
読み方はこうです。「いざというとき」には同意がなくても情報は動きます。けれど「いざ」の前に、近所の誰かがあなたを気にかけている状態を作るには、同意が要ります。そして避難は、たいてい「いざ」の前に始めないと間に合いません。
対象になる人
避難行動要支援者の要件例(内閣府の取組指針)
| 区分 | 例 |
|---|---|
| 介護 | 要介護認定3〜5を受けている者 |
| 身体障害 | 身体障害者手帳1・2級の第1種 |
| 知的障害 | 重度以上と判定された知的障害者 |
| 精神障害 | 精神障害者保健福祉手帳1・2級で単身世帯 |
| 子ども | 医療的ケア児/保護者のみでは避難行動が困難である障害児 |
出典:内閣府「取組指針」(令和3年5月改定)。要件は市町村が定めます。ここに当てはまらなくても、申し出により登録できる市区町村があります。
「精神障害者保健福祉手帳1・2級で単身世帯」のように、世帯の状況が条件に入っている例があります。同居家族がいても、その家族が日中いない、高齢である、といった事情は窓口で伝えてください。
名簿に載る情報
名簿に記載されるのが通常の項目
- 氏名
- 生年月日
- 性別
- 住所または居所
- 電話番号その他の連絡先
- 避難支援等を必要とする理由
- その他市町村が必要と認める事項
「避難支援等を必要とする理由」が入るのが、この名簿の特徴です。だから同意が問題になります。誰にどこまで伝わるのかを、登録の前に確認してください。
登録の仕方
登録までの流れ(一般的な形)
- 市区町村の窓口に連絡する防災担当課か福祉担当課。制度の名称は市区町村で違います。
- 対象になるか確認する要件に当てはまらなくても、申し出で登録できることがあります。
- 同意書に記入する誰に情報を渡すかを確認する。
- 連絡先を登録する離れて暮らす家族の連絡先も入れられるか聞く。
- 個別避難計画につなげる→ 個別避難計画
- 避難先を確認する→ 福祉避難所と直接避難
迷いやすい場面
近所に知られたくない
同居家族がいる
要件に当てはまらない
引っ越した
本人が判断できる状態にない
登録したかどうか分からない
よくある取りこぼし
同意していなかった
平常時の情報提供には原則として本人の同意が必要です。
連絡先が古いままだった
電話番号や家族の連絡先が変わっていると意味がありません。
名簿だけで安心した
名簿は一覧です。誰がどう助けるかは個別避難計画で決めます。
引っ越し後に登録し直していない
市区町村ごとの制度です。
支援が必要な理由が古い内容のままだった
状態が変わったら更新してください。
確認の順序
名簿について確かめる
- 市区町村に制度の名称を聞く「災害時要援護者」など呼び方が違います。
- 登録済みかどうか確認する過去に手続きした可能性があります。
- 同意の範囲を確認する誰に渡るのか。
- 登録内容を更新する連絡先・状態・支援が必要な理由。
- 個別避難計画の順番を聞く→ 個別避難計画
→ 4つの制度の全体像/避難行動要支援者名簿/個別避難計画/福祉避難所と直接避難/電源が要るときの給付/救急医療情報キット/家族が先にやること
確認に使った一次情報
- 内閣府(防災担当)「避難行動要支援者の避難行動支援に関すること」内閣府 避難行動要支援者の避難行動支援
- 内閣府「避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針」(令和3年5月改定)取組指針(PDF)
- 内閣府「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」(令和3年5月改定)福祉避難所の確保・運営ガイドライン(PDF)
- 江戸川区「在宅人工呼吸器使用者自家発電装置等給付事業」江戸川区 在宅人工呼吸器使用者自家発電装置等給付事業
- 板橋区「在宅人工呼吸器使用者非常用電源装置給付事業」板橋区 在宅人工呼吸器使用者非常用電源装置給付事業
- 墨田区「救急医療情報キットを配布しています」墨田区 救急医療情報キット
よくある疑問
同意しないと名簿に載りませんか。
同意すると誰に情報が渡りますか。
名簿の情報は外に漏れませんか。
登録すると避難のときに必ず来てもらえますか。
要介護1でも登録できますか。
災害時に助けが要る人の制度ガイドの記事一覧
一次情報の確認先
本ページの前提となる制度・統計は、以下の公的機関等の公表情報で確認できます。最新の内容は必ず各機関の公式ページでご確認ください。