壊す費用を自分で全部持たない道がある
災害で建物が壊れたとき、解体の費用を所有者が全部負担しない仕組みがあります。市町が直接解体する「公費解体」と、自分で契約して後から払い戻しを受ける「自費解体」の2つです。石川県は対象を「り災証明書(又は被災証明書)で、『全壊』・『大規模半壊』・『中規模半壊』・『半壊』と判定された建物」としています。
2つの方式
公費解体と自費解体(石川県の記載から)
| 公費解体 | 自費解体(費用の立替えと払戻し) | |
|---|---|---|
| 誰が契約するか | 市町 | 所有者 |
| お金の流れ | 市町が直接解体する | 所有者が費用負担して契約し「後で市町から払戻しされる」 |
| 立て替え | 不要 | いったん自分で払う |
| 時期 | 市町の順番待ちになる | 自分の都合で進められる |
| 業者選び | 市町が手配 | 自分で選ぶ(要件あり) |
出典:石川県「被災建物の解体・撤去(公費解体)について」「被災建物の自費解体(解体費用の立替えと払戻し)について」。制度の呼び方・要件は災害ごと、市町村ごとに異なります。
急ぐ事情がある場合は自費解体、資金を用意できない場合は公費解体、という選び方になります。ただし自費解体でも、事前に市町村に申し出ておく必要があるのが通常です。黙って壊してから請求できるとは限りません。着手の前に必ず窓口へ確認してください。
対象になる建物
石川県は対象をこう書いています。
り災証明書(又は被災証明書)で、「全壊」・「大規模半壊」・「中規模半壊」・「半壊」と判定された建物
出典:石川県「被災建物の解体・撤去(公費解体)について」
住家の被害認定の区分(内閣府・損害基準判定)
| 区分 | 損害割合 |
|---|---|
| 全壊 | 50%以上 |
| 大規模半壊 | 40%以上50%未満 |
| 中規模半壊 | 30%以上40%未満 |
| 半壊 | 20%以上30%未満 |
| 準半壊 | 10%以上20%未満 |
| 準半壊に至らない(一部損壊) | 10%未満 |
出典:内閣府(防災担当)。判定は「住家の主要な構成要素の経済的被害の住家全体に占める損害割合」にもとづきます。この区分が、その後に使える制度をほぼ全部決めます。
「準半壊」以下は対象から外れています。だから、判定の区分がここでも効いてきます。納得がいかない場合は再調査を依頼できます。→ 被害認定と再調査
同意書が要る
石川県は、申請に必要なものとして「り災証明書」のほか、「相続人や共有者、抵当権者などがいる場合は、その同意書が必要」としています。
同意が問題になりやすい場面
- 名義が亡くなった親のまま(相続人全員の同意が要る)
- 兄弟の共有になっている
- 住宅ローンが残っている/完済したが抵当権を抹消していない
- 建物と土地の名義が違う
- 相続人の一人と連絡が取れない
災害のあとでこれを整えるのは大変です。戸籍をたどって相続人を確定する作業は、通常でも数週間から数か月かかります。公費解体には受付期限が設けられるので、名義に不安がある場合は、早い段階で窓口に相談してください。
家財は先に運び出す
石川県は、公費解体を希望する人に向けてこう呼びかけています。
できるだけ家財を回収しておくことが、迅速な解体につながりますので、何卒、ご協力をお願いいたします
出典:石川県「被災建物の解体・撤去(公費解体)について」
家財が大量に残っていると、解体の日数が大幅に長くなるためです。つまり、解体の順番待ちの列に並ぶ前に、中を空けておくほうが早く進みます。
そして、運び出したものの中には、被害を受けていないものが混ざっています。水がかからなかった押し入れの中、二階に置いていたもの、金庫や仏壇の中身など。まとめて処分してしまうと、確かめる機会がなくなります。
運び出したものの中に、値段が付くものがないか
着物・切手・骨董などは買い取りの対象になることがあります。被害を受けていないものが混ざっていることがあります。
- k
- u
- r
- a
- s
- h
- i
災害ごみとして出すものについては、市区町村の減免制度があります。→ 災害ごみと手数料の減免
業者を選ぶときの条件
自費解体では自分で業者を選びます。石川県は次の点を挙げています。
石川県が挙げている点
- 「建設業許可」または「解体工事業登録」を有する業者と契約する
- 暴力団排除の誓約書を業者から入手する
- 請負金額により許可要件が異なる場合がある
- 各市町のホームページで詳細を確認する
災害のあとには、飛び込みで営業に来る業者が現れます。許可・登録の有無は必ず確認してください。要件を満たさない業者と契約すると、払戻しが受けられないことがあります。
平時の空き家の解体との違い
災害時の公費解体と、平時の空き家の除却補助金
| 公費解体(災害時) | 空き家の除却補助金(平時) | |
|---|---|---|
| 根拠 | その災害に用意された制度 | 市区町村の交付要綱 |
| 負担 | 市町が解体する(または費用を償還) | 補助(限度額がある) |
| 対象 | り災証明書の判定が半壊以上(石川県の例) | 築年・空き家期間・老朽度の評点など |
| 家財 | 先に回収するよう求められる | 補助対象外とされることが多い |
| 共有・相続 | 同意書が必要 | 全員の同意書を出した代表者 |
出典:石川県および各市区町村の公表内容から整理。平時の制度については別に整理しています。→ 空き家の除却補助金ガイド
状況ごとの考え方
公費解体の受付が始まっていない
先に壊してしまった
名義が亡くなった親のままだった
ローンが残っている
解体するか修理するか迷っている
業者から「今すぐ契約すれば早い」と言われた
よくある取りこぼし
窓口に確認せず解体してしまった
償還が受けられないことがあります。着手の前に必ず窓口へ。
判定が「準半壊」で対象外だった
石川県の例では半壊以上が対象です。納得がいかない場合は再調査を依頼できます。
同意書が集まらず期限に間に合わなかった
相続人・共有者・抵当権者の同意が要ります。早めに着手してください。
家財を残したまま順番待ちに並んだ
石川県は家財の回収を呼びかけています。解体日数が長くなります。
許可・登録のない業者と契約した
石川県は「建設業許可」または「解体工事業登録」を有する業者との契約を求めています。
確認の順序
解体を考えるとき
- り災証明書の区分を確認する半壊以上かどうか(石川県の例)。
- 市町村に公費解体の受付があるか聞くいちばん先。自費解体の償還があるかも一緒に。
- 名義と権利関係を確認する登記事項証明書で所有者・抵当権を確認。
- 同意書を集め始める時間がかかります。
- 家財を運び出す解体が早く進みます。→ 災害ごみと手数料の減免
- 申請する期限があります。
- (自費の場合)許可・登録を確認して契約する契約前に窓口へ確認。
→ り災証明書から始まる/り災証明書と被災証明書/被害認定と再調査/災害ごみと手数料の減免/公費解体と自費解体/使えるお金の制度/税と保険料の減免
確認に使った一次情報
- 内閣府(防災担当)「災害に係る住家の被害認定」https://www.bousai.go.jp/taisaku/pdf/r203kaitei.pdf
- 内閣府「被害認定に関するQ&A」https://www.bousai.go.jp/taisaku/pdf/higai_qa.pdf
- 内閣府「被災者支援に関する各種制度の概要」(令和8年6月1日現在)内閣府 被災者支援に関する各種制度の概要
- 内閣府「被災者生活再建支援制度の概要」内閣府 被災者生活再建支援制度の概要
- 妙高市「罹災証明書と被災証明書について」妙高市 罹災証明書と被災証明書について
- 平塚市「火災や風水害等により家庭から生じた一般廃棄物の処理手数料の減免について」平塚市 一般廃棄物の処理手数料の減免
- 石川県「被災建物の解体・撤去(公費解体)について」石川県 被災建物の解体・撤去(公費解体)
- 石川県「被災建物の自費解体(解体費用の立替えと払戻し)について」石川県 被災建物の自費解体
よくある疑問
公費解体はどの災害でも行われますか。
半壊でも対象になりますか。
先に自分で壊した場合、あとから請求できますか。
家の中の物はどうなりますか。
土地はどうなりますか。
災害のあとの手続きガイドの記事一覧
一次情報の確認先
本ページの前提となる制度・統計は、以下の公的機関等の公表情報で確認できます。最新の内容は必ず各機関の公式ページでご確認ください。