名前が似ている猶予が2つある。期限が真逆
税金を一時に払えないとき、差押えを待ってもらう仕組みが2つあります。徴収猶予と、換価の猶予です。この2つは要件も期限も違います。横浜市は徴収猶予の申請期限を「猶予を受けようとする期間より前(申請の期限はありません)」とし、換価の猶予は「納期限から6か月以内」としています。片方には期限がなく、片方には6か月の期限がある。ここを取り違えると、使えるはずの制度が使えなくなります。
2つの猶予の違い
徴収猶予と換価の猶予(横浜市の記載から)
| 徴収猶予 | 換価の猶予 | |
|---|---|---|
| きっかけ | 災害・盗難/病気・負傷/事業の廃止・休止/事業の著しい損失/賦課決定の遅延 | 「一時に納付することにより、その事業の継続又は生活の維持を困難にするおそれ」 |
| 申請期限 | 「猶予を受けようとする期間より前(申請の期限はありません)」(賦課決定の遅延だけは納期限まで) | 「納期限から6か月以内」 |
| 他に滞納があると | — | 「すでに滞納している市税がある場合等には認められません。」 |
| 滞納処分 | 「新たな督促や差押え、換価などの滞納処分が行われません。」 | 「すでに差押えを受けている財産の換価(売却)が猶予されます。」 |
| 延滞金 | 「全部又は一部が免除されます。」 | 「一部が免除されます。」 |
| 期間 | 「1年を限度に」 | 「1年以内の期間に限り」 |
出典:横浜市「市税の徴収猶予制度」「換価の猶予制度」(2026年9月10日確認)。取り扱いは市区町村ごとに異なります。
いちばん大きい違いは、延滞金の扱いです。徴収猶予は「全部又は一部」、換価の猶予は「一部」。要件に当てはまるなら、徴収猶予のほうが有利になりうる設計です。
そして換価の猶予には「他に滞納があると認められない」という条件があります。複数の税を滞納している場合、換価の猶予は使えないことがあります。→ 換価の猶予
国税と地方税で名前が違う
同じ制度でも呼び方が違う
| 国税(税務署) | 地方税(都道府県・市区町村) | |
|---|---|---|
| 売却を待ってもらう | 換価の猶予 | 換価の猶予 |
| 徴収そのものを待ってもらう | 納税の猶予 | 徴収猶予 |
| 手引 | 国税庁「猶予の申請の手引」(Ⅰ 換価の猶予/Ⅱ 納税の猶予) | 各自治体の「猶予の申請の手引き」 |
| 窓口 | 税務署 | 都税事務所・区役所や市役所の税務課 |
| 電子申請 | e-Tax | eLTAX |
出典:国税庁「猶予の申請の手引」・横浜市の公表内容(2026年9月10日確認)。「納税の猶予」と「徴収猶予」は、国税と地方税で呼び方が違うだけと考えると整理しやすくなります。→ 国税の場合
検索するときに、この違いでつまずきます。住民税のことを調べたいのに「納税の猶予」で検索すると、国税庁と税理士事務所のページばかり出てきます。地方税なら「徴収猶予」で探してください。
猶予が認められると何が起きるか
徴収猶予が認められたとき(横浜市の記載)
- 「1年を限度に市税の徴収が猶予されます。」
- 「新たな督促や差押え、換価などの滞納処分が行われません。」
- 「すでに差押えを受けている場合は、申請により差押えが解除される場合があります。」
- 「徴収猶予が認められた期間中の延滞金の全部又は一部が免除されます。」
換価の猶予が認められたとき(横浜市の記載)
- 「すでに差押えを受けている財産の換価(売却)が猶予されます。」
- 「差押えにより事業の継続又は生活の維持を困難にするおそれがある財産については、新たな差押えが猶予(又は差押えが解除)される場合があります。」
- 「換価の猶予が認められた期間中の延滞金の一部が免除されます。」
出典:横浜市「市税の徴収猶予制度」「換価の猶予制度」(2026年9月10日確認)。
どちらも「払わなくてよくなる」制度ではありません。猶予が許可されると、横浜市は「猶予許可通知書」に記載された分割納付計画のとおりに納付する必要があるとしています。猶予は分割で払うための制度です。→ 100万円で出す書類が変わる
期限
申請の期限(横浜市の記載から)
| 理由 | 申請期限 |
|---|---|
| 財産について災害を受け、又は盗難にあったこと | 猶予を受けようとする期間より前(申請の期限はありません) |
| 本人または生計を一にする親族などが病気にかかり又は負傷したこと | 同上 |
| 事業を廃止し、又は休止したこと | 同上 |
| 事業について著しい損失を受けたこと | 同上 |
| 法定納期限から1年以上経過した後に賦課決定の遅延等で税額が確定したこと | その市税の納期限まで |
| 換価の猶予(上のいずれにも当てはまらないとき) | 納期限から6か月以内 |
出典:横浜市「市税の徴収猶予制度」「換価の猶予制度」(2026年9月10日確認)。期限は市区町村ごとに異なります。
「申請の期限はありません」と書かれているのは、徴収猶予の側です。災害・病気・廃業・著しい損失に当てはまるなら、納期限から6か月を過ぎていても道があります。→ 徴収猶予
減免とは別のもの
減免と猶予の違い
| 減免 | 猶予 | |
|---|---|---|
| 結果 | 税額そのものが減る・免除される | 税額は変わらない。払う時期が延びる |
| 延滞金 | 減免された分には生じない | 猶予期間中の分が全部または一部免除される |
| 差押え | 制度の趣旨が違う | 猶予される・解除される場合がある |
| 申請先 | 税務課(減免の担当) | 税務課(徴収・収納の担当) |
出典:横浜市・目黒区の公表内容(2026年9月10日確認)。→ 減免・免除の申請
まず減免に当てはまるかを確認し、当てはまらない、または減免しても払えないときに猶予を考えます。順番が逆になると、減免の納期限を過ぎてしまうことがあります。
共通する進め方
横浜市の記載から整理した流れ
- 納税通知書・督促状を手元に置くどの税か、納期限はいつかを確認します。
- 徴収・収納の担当課に電話する減免の担当とは別の係のことがあります。
- どちらの猶予かを整理する災害・病気・廃業なら徴収猶予、それ以外は換価の猶予。
- 猶予を受けたい金額を決める100万円を境に出す書類が変わります。
- 財産と収支の資料をそろえる資産・負債・収支状況・納付計画を書きます。
- 申請書と添付書類を出す窓口・郵送・eLTAX(国税は e-Tax)で出せます。
- 許可・不許可の通知を待つ許可されたら通知書の分割納付計画のとおりに納めます。
状況ごとの入口
納期限から6か月を過ぎている
ほかにも滞納している税がある
もう差押えを受けている
担保になる財産がない
税務署から来た税金の話である
そもそも税額を減らせないか知りたい
よくある取りこぼし
2つの猶予を同じものだと思った
要件も期限も延滞金の扱いも違います。
地方税を「納税の猶予」で調べた
地方税では「徴収猶予」と呼びます。検索で出てくる顔ぶれが変わります。
納期限から6か月を過ぎてあきらめた
徴収猶予には申請の期限がない理由があります。
猶予されれば払わなくてよいと思った
猶予は分割で払うための制度です。猶予許可通知書の納付計画どおりに納めます。
減免より先に猶予を申請した
減免には納期限までという短い期限があります。先に減免を確認してください。
減免の窓口に猶予を相談した
同じ税務課でも係が分かれていることがあります。
→ 徴収猶予と換価の猶予は別のもの/換価の猶予(納期限から6か月以内)/徴収猶予(申請の期限がないものがある)/100万円で出す書類が変わる/担保が要るとき・要らないとき/国税の場合(税務署・e-Tax)
ほかのクラスタで扱っているもの:減免・免除の申請/住民税の減免/被災したときの税と保険料の減免
確認に使った一次情報
- 国税庁「G-9 換価の猶予の申請手続」国税庁 換価の猶予の申請手続
- 国税庁「猶予の申請の手引」国税庁 猶予の申請の手引
- 横浜市「換価の猶予制度」横浜市 換価の猶予制度
- 横浜市「市税の徴収猶予制度」横浜市 市税の徴収猶予制度
- 横浜市「徴収猶予・換価の猶予の申請方法」横浜市 猶予の申請方法
よくある疑問
徴収猶予と換価の猶予は何が違いますか。
猶予されると税金は免除されますか。
どのくらいの期間、猶予されますか。
差押えを受けていても申請できますか。
私は猶予の対象になりますか。
税の猶予の申請ガイドの記事一覧
一次情報の確認先
本ページの前提となる制度・統計は、以下の公的機関等の公表情報で確認できます。最新の内容は必ず各機関の公式ページでご確認ください。